仕事が暇なので「寺門興隆」

  【今月の「寺門興隆」】

 参道のもみじが少しだけ色づいてきました。


 本日は拝観受付の担当だったがお参りの方も数えるほど。
 こんなので自称“観光寺院”としてやっていけるのか少々不安になるが…

 本日、お坊さん専門誌「寺門興隆」が届く。早速、受付にて熟読。
 この雑誌はお坊さんのゴシップ記事が多いので読まないというお坊さんも居られるのだが、例えば立派なお寺作りをしている御住職 の記事はもちろん参考になるし、お坊さんの失敗例からは<何をやってはいけないか>というのが逆に良く分かる。そう考えれば毎 月1000円は決して高くない出費だと思う。

 今月は興味深い記事満載である。

 長期連載記事「つっぱり和尚ホンネ奮戦記」(高橋芳照氏)を読む。
 式場に行ったら金襴のスリッパを出されたが、衣は和でスリッパは洋。スリッパで式場に入るのはみっともないッ!とかなり御怒りのご様子…地元の葬儀ホールでは導師は赤、役僧は青の金襴のスリッパを履く。一度、葬儀場から火葬場に行こうとしてタクシーに乗り、足許を見たら金襴のスリッパを履いたままであることに気付いて慌てて戻った。スリッパは危険である(笑)地元のS葬儀場では冬ソナのテーマが年中流れているが、高橋氏が見たらきっと激怒されるに違いない。私も一回怒ってみようかな「葬式に韓流ドラマは関係無いだろっ!」って…

 京都府丹波町にあるフリースクールで起きた暴行事件について。
 このフリースクールはお寺の境内地にあったのだという…この点は新聞報道ではあまり触れられていなかったように思う。
 無住の兼務寺院の敷地を借りしていた容疑者夫婦が境内地の一部にフリースクールを開業していて事件につながったという。

 無住の兼務寺院が犯罪の場になりかねないというのは教訓だと思う。
 市内のお寺もかなりの数が兼務寺院で住職や管理者が常駐していなことが多い。

 フリースクールの利用者側からすればお寺の境内にある学校というので安心感を持たれたのではないだろうか。
 ウチの山寺にも昨年電話が掛かってきて、お寺を会場にして時計を販売したいとか、着物を販売したいと提案されて断ったことがある。

 お寺側もやはり利用者を見極めることが大切だろう。
 もっとも人手が足りなくて管理の行き届かないお寺では、「草刈だけはやりますから」とか言われるとついつい有難いと思って相手の言うままに境内を貸したりしそうで、これも良く分かることではあるが…

 見逃せないのが中国におけるイスラム教弾圧の記事。

 論者は真言宗僧侶でもあり、アジアをめぐる国際関係に詳しい荒木重雄さんという方。
 オリンピック開催と前後して新疆ウイグル自治区では警察施設や政府庁舎への攻撃が行われ中国政府の面目を潰したが、同自治区では現在、殆んど報復とも言える徹底的な弾圧が行われてという。


 例えばラマダーン断食月)には日の出から日没まで飲食しないことになっているが、新疆ウイグル自治区では飲食店や食堂を通常どおり開店させ、公務員や学生には断食加わらないように指示し、男性がひげを伸ばすことや女性がショールを被ることも禁じているという。
 過激な組織の取り締まりを超えて、イスラム教徒の基本的な戒律や慣習を破壊する…
これは中国政府が正にチベットで行ったことであり、チベットと同様に逮捕、監禁、拷問、処刑といった容赦無い処断がこれらの地域でも行われていることを伺わせるに十分である。

 チベットにはダライ・ラマ法王が存在して、広く国際社会に中国政府の暴挙を訴えているが、一方、中国のイスラム教徒は国際社会に広く認知された人材を持たない。そのことが中国のイスラム教徒弾圧を見えにくくしている。

 今月の「寺門興隆」はなかなか内容の濃い記事が多い。まだまだお参りの方も少ないのでしばらくは受付でこの雑誌を読むことが多くなりそうである。