落葉,どんぐり,柿

 本日は時折雨が降る。晴れたり、曇ったりと天気が目まぐるしく変わった。

 団体さんを引率して本堂前の石段の所まで行き、お寺の説明しようとしたら、斜面にある何十ものもみじの木から一斉に落葉が舞い落ち始めた。一同の口から「ほーっ」とため息とも付かない声が洩れた。

 一人の方が「散華みたいですね」と言われたのに納得した。
 正に法要で撒かれる散華のように見えた。落葉の時期だけに見られる素敵な光景だった。

 
参道を歩くとどんぐりの落ちる音を聞くことがある。
 小さな実が落ち葉に当たる音は微かだが、しっかり中身の入っているどんぐりの音は存在感のある音である。
 子供達はどんぐり拾いが好きである。
 時々、袋一杯のどんぐりを満足そうに持っている子供を境内で見かける。自分もまたどんぐりを宝石のように大切にしていた頃を懐かしく思い出す。


 
今年はお寺の柿の木から沢山の収穫があり、毎日のように柿を頂く。
 柿は秋の味覚である。

      柿くえば鐘が鳴るなり法隆寺   正岡子規

 大変、有名な句だが、子規はこの句に先立って次の句を詠んだという

      晩鐘や寺の熟柿の落ちる音    正岡子規

 細かいことに拘るようだが、子規が食べたのは柔らかい熟した柿だったのだろうか、それとも若い、固い柿だったのだろうか。

 「熟柿」という言葉からは当然、柔らかい柿が思い浮かぶ。
 だが「柿くえば鐘が」というフレーズにはカ行の音が5つも入っている。
 柔らかい熟柿より固い、若い柿のさっくりした食感のほうがカ行の音にぴったりくる気がする。

 古都の鐘の音にはまったりした熟柿より若い柿を取り合わせるほうがより新鮮な感じがするのだがどうだろうか。

 私自身は柔らかい柿より固い柿のほうが好きである。
 柿の穏やかな甘さを味わうと心がほっこりする感じがする。