「おくりびと」


本日は夕食後に妻と映画館へ。
毎月1日は「ファーストデイ」といって大人料金が1000円になるのである。

昔の映画館というのは薄暗くてうらぶれた印象があったが、地元の映画館は都会と同じように綺麗で清潔だった。尤も観客は少なく10人ほどである。

本木雅弘主演の「おくりびと」を観た。

失職したチェリストの主人公は故郷である山形に帰り、遺体を納棺する納棺師の仕事に就く。

当地では葬儀社の方がそうした仕事をされていて、専門職として納棺を行う仕事があることを初めて知った。

困ったのは本木雅弘氏と広末涼子氏の夫婦がとても幼く見えたことだ。
夫は妻に自分の仕事を誇りをもって語れず、妻も自分の夫の仕事に偏見を抱いてしまう。もちろん二人を悪く言うつもりはない。むしろ久しぶりに自分が歳をとったなと実感したのである。ちょっと寂しい気もする…

 それにしてもいい映画である。
 少年のようにひたむきで清潔感のある本木氏を始め、役者さん達が皆良い。織り込まれる山形の自然も、チェロの演奏も、そして久石譲氏の音楽が格別の素晴らしさである。

 本木氏は様々の死を見送り、やがて自分に親しいものを見送る。本木氏の納棺師としての所作は美しくて、細やかな心遣いに溢れている。

 可笑しくて、悲しくて、美しくてそれらの感覚が違和感なく綺麗に調和を保っている。

 この映画を観るとどのような仕事であれ、そこに心が込められるかがとても大切なのだと感じさせられる。そして少しだけ死というものを身近に感じることができるだろう。死というのは<門>にすぎなくて、その先にまた別の道があるというのはある登場人物の言葉である。

 人の死を見送るというのはとても深い意味を持つ。私は自分が僧侶として初めて参加した葬儀のことが今でも記憶から離れない。むしろ仕事として惰性のうちに人の死を観ることを恐ろしいことのように思う。

 自分また心を込めて人を送れるだろうか…改めてそんなことを考えた。