女優さんと「観音経」

 「スタジオパーク」というNHKのテレビ番組をご存知だろうか?
 毎回、各界の著名人がゲストに招かれるのだが、羽田美智子さんという女優さんが出演された際、「観音経」というお経の話になったそうである。(以下の内容はこの番組をご覧になった知人のKさんが教えて下さったものである)

 もともと羽田さんは信心深い方だったそうだが、ある時は羽田さんが飛行機の中で非常に取り乱しそうになった時にスチュワーデスの方からこれを読むと落ち着きますよと言われて渡されたのが「観音経」だったそうである。
その後、羽田さんが友人にこの話をしたところ、その友人が「観音経」に詳しい人で、手製の「観音経」の本を作ってくれたそうである。

 羽田さんは毎朝、「観音経」を唱えてから仕事に出かけるのが日課だそうである。
 なかなかいいお話だと思う。若くして信心があるというのはとても素晴らしいと思う。

 私達が「観音経」と呼んでいるのは「法華経」(「妙法蓮華経」)の28の章のうちの25番目にある「普門品(ふもんぼん)」である。もともとは独立した経典であったものが「法華経」に取り入れられたものらしい。

 お経に「偈文(げもん)」といってお経の内容を要約した部分が付いていることがある。全文を唱えない時はこの「偈文」だけ唱えることも多い。「観音経」の「偈文」である「観音経偈」は私も法事で読むことが多い。真言宗だけでなく禅宗でも広く使われるお経である。

 この「観音経」は数々のお経をインドの原典から漢訳したことで知られる鳩摩羅什(くまらじゅう)の訳で知られる。
 危機に瀕した人間が観音様の力にすがるとその苦難を回避できることが詳しく書かれている。

 「般若心経」がやや哲学的なのに対して、「観音経」はより具体的な描写が多く、ちょっと漫画的ですらある。

 例えば「処刑されそうになったときに観音様の力を念じれば相手の刀がぽっきり折れる」「手足を枷で拘束されても観音様の力を念じればすぐに脱出できる」「恐ろしい獣の囲まれて爪や牙にかけられそうになっても観音様の力にすがれば獣は彼方に逃げていく」などなどである。

 このお経には「解脱」という言葉が繰り返しでてくるが、<因縁を解脱する>というより、<危機を脱する>という意味で使われているようで興味深い。

 「観音経」は<危機管理のお経>といっては言いすぎかもしれないが、かって人間が危険な眼に遭うことが多かった時代には広く信仰を集めたに違いない。


 霊場会の年度末総会で行う発表の原稿を作りが全然進まない。
 ピンチの時はやはり「観音経」におすがりするしかないかも…