最後のもみじが散る頃

 


 先日、久しぶりに兼務している山寺に留守番に出かけたら、もみじが見事に色づいていた。
 このお寺は私が住んでいるお寺より高地にあり、もみじの色が鮮やかだった。
 いつも不思議なのだが高地のもみじは色も鮮やかに感じる、排気ガスが少なく、空気が澄んでいるせいなのか、それとも寒暖の差が大きいからなのか分からないが興味深い。

 境内のもみじのうち、歴代住職のお墓のそばにある一本の老木が最後まで青みを残していた。
 晴天の時に下から見上げると、空の青、周囲の紅葉、そしてこの老木の緑が入り混じって心惹かれる美しさだった。
 最後まで緑を残していたこの木も他の木々が散った後、鮮やかに紅葉したが、ここ数日で落葉した。境内は落葉したもみじの葉と梢の灰褐色で覆われている。


 
 本日は雨天。

 午後に一名仏像拝観の予約があった。
 
 私と変わらない年齢に見えるがストライプのスーツにピンク系にシャツ、ノータイという出で立ちでとても恰幅のいい体格の男性である。
 東京在住の方で仕事で当地にこられたのだという。仕事は外資系の企業に勤務されているとのこと。外資系の方で仏像に関心があるのが面白いと思った。

 当山の仏像のうちでやはり快慶の深沙大将に感心しておられた。
 初対面の方だったが、とても素直な方で私の説明を一生懸命聞いて下さった。全国のお寺を回っておられ、インド、ベトナムなどにも行かれたことがあるというから本格的である。

 日本の仏像についていろいろ話が弾んでとても楽しい時間を過ごすことができた。
 仏教美術としての仏像はアジア各国にあるが、日本の仏像が最も優れているのではないかという点で意見が一致した。深沙大将沙悟浄の関係を説明した後、恰幅のいい相手の方に「あなたは猪八戒みたいですね」と言いそうになったがさすがに失礼だと思ってやめた…

 行かれた数々のお寺の中には荒廃しているお寺もあり、そうしたお寺は仏像の顔が悲しそうに見えるとのこと。荒れたお寺は掃除をされることもあると伺って若いながら立派な方だと感心した。

 
 夕方、かずぼうさんに頂いた小三治師匠のCDを聞きながら、1時間近くかけてストレッチした。
 こんなに時間をかけて体のメンテナンスしたのは久しぶりである。
 11月の疲れと寒さで萎縮した身体がほぐれるといつの間にか一眠りしていた。

 予報では明日は本日より13度も気温が下がるとのこと。いよいよ寒さの増す季節である。