美輪明宏「愛の話 幸福の話」の話

 今日は兼務しているT寺に行くと…
 庫裏の裏山の木が沢山切り倒されやたらと見晴らしが良くなっていた。

 妹夫婦が雑木を切り倒して薪を作ってくれているのだが、現場に行ってみると大小500本はあろうかという薪の山ができていた。最近やたらとチェンソーを使ってるなとは思っていたがこれほどとは…これだけ多いと運ぶのが大変である。今日もほぼ一日費やして薪運びである。小型の運搬車に薪を積んで坂を下っていたら薪の重さで車体が跳ね上がり私まで飛ばされそうになった(笑)あわててハンドルにつかまって車体に両足を掛けて身体を後ろにそらせバランスをとった。薪運びも大変である…

 疲れたので帰ってから美和明宏「愛の話 幸福の話」(集英社)をパラ読み。

 本書の後半では美和氏と交流のあった中原淳一寺山修司東郷青児三島由紀夫らとの交流が語られているのが読み応えがある。

 この本には沢山写真が挿入されているが中に息を呑むほど美しいものが何枚もある。
 例えば東郷青児を写した一枚。場所はアトリエである。手前にモデルが裸体で立っている。そのモデルを見つめてキャンバスに向かう東郷青児をモデルの背後から撮った一枚などは素晴らしい。東郷青児が咥えタバコでコートを肩に羽織り、モデルを凝視しながら筆を動かしている姿は惚れ惚れするような美しさである。

 ソファに腰かけ、リラックスした様子で洋書を読む三島由紀夫の写真もいい。
三島由紀夫はこの山寺と少しだけ縁がある。「金閣寺」の冒頭にこの山寺の様子が少し出てくるが、三島由紀夫はこの山寺を取材に訪れたと聞いている。)
 美和氏と三島由紀夫との親交はまるで兄弟のようだったというが、収められた数々のエピソードを読みながら写真を眺めるとまた違った味わいがある。


 及川光博氏と美和氏の対談も楽しい。

 及川氏はその根っこにはかなり強い芸術への志向があるようである。そうした感性がアイドル扱いするファンに理解されないという苦悩とそれに対する美和氏の明快な答え。及川氏への愛情溢れるアドバイスは深みがある…<個>であるとは<孤>なのだという語りに説得力がある。

 美和氏が映画評論家の淀川長冶さんから聞いたという宝石と女優の話も出色である。

「マリーネ・ディートリヒは身につけている宝石ばかりが目立ってときに下品になる。エリザベス・テラーは彼女の顔だけが光って宝石が目立たないことがある。グレタ・ガルボはどんな高価な宝石を身につけても、彼女自身と宝石の両方がいっぺんに光り輝く…」なんかいい話と思いません?映画評論家といっても演技や脚本や音楽だけでなく、ここまで観察できるなんて素晴らしいと思う。

 ちなみに淀川氏と会った美和氏は宝石と一体化していて淀川氏は美和氏が宝石を身に着けていると分からなかったそうである(笑)やっぱり美和氏はタダ者ではない…