<背筋疲労>攻略作戦

東洋医学では人間が健康であるための条件として<気血の巡り>が良いことをあげる
この気血の巡りが悪いことが疲労や病気の大きな原因となる。

人体の気血の巡りというのは一様ではなくて気血の巡りの良い場所と悪い場所がある。

気血の巡りの良い場所というのは良く動かす場所、自分の視界に入る場所、自分の手で触れる場所などである。その逆に気血の巡りの悪い場所というのは余り動かさない、自分の視界に入らない、自分の手で触れないなどの条件に当てはまる場所である。

気功家の山口令子先生が全身の<気血の循環>を阻害する大きな要因として指摘されているのが背筋のコリや冷えである。※

背筋というのはかなり大きな面積があるが、典型的に<巡りの悪い場所>である。目に見えないし、触れない、身体を支えることが多いのであまり動かさない。殆どの日本人が背筋がコリや冷えを貯めているにちがいない。

私達は疲れると何もしたくなることが多い。動かないか、だらだらしていたいというのは身体としてはその間に老廃物を処理=疲労の回復を目在しているわけである。

ところが気血の巡りが悪かったり、老廃物を処理する能力が落ちていると、いつまで経っても疲れがとれないことになる。(女性に関していえばこの老廃物の処理能力というのは美容やダイエットに直結している問題であることは言うまでもない…)

あまりいい表現ではないが疲労の抜けない身体というのは下水処理システムに下水を送り込むパイプが詰まっていたり、下水処理システム自体が上手く稼動していないようなものである。


のらみみさんにコメントを頂いたように、背中のコリや冷えというのは手が届かないので自分でどうこうできないことが多いのである。

私のオススメは電気カーペットにべたーっと仰向けに寝て背筋を温めることである。寒い時など特に良い。

仰向けになったまま運動科学者の高岡英夫さんの薦めるゆる体操のうち、仰向けで行う体操をやるのもいいだろう。仰向けになって背筋に体重を掛け、身体をゆすると、床(カーペット)と体芯部の摩擦で背筋や腰の筋肉がかなりほぐれるのが分かる。力を抜いて、ゆっくり、丁寧に揺らすのがコツである。

背筋が硬くなっているということは背筋につながる首、肩、腰全体に悪影響を与えていることになる。言い換えると、背筋がしなやかに、健康になると身体のパフォーマンスもとても良くなる。(ちなみに高岡英夫さんは背骨を一個ずつ動かすことができるそうである。そこまでできなくてもいいと思うが…)

だが、背筋のコリや冷えに一番効くのは誰かに背筋をマッサージしてもらうことである。

経穴(ツボ)の名称というのいろんな名付け方があるが、「愈」という字の付いている経穴は治療にかかわることが多い。例えば「腎愈」なら腎臓の治療に使う経穴である。

面白いことに背骨の両側にはずらーっとこうした経穴が並んでいるのである。「肺愈」「心愈」「肝愈」「脾愈」「胃愈」「腎愈」「大腸愈」…
重要な臓器に効く経穴のフルラインナップなのである。だから友人や家族に背骨の両側を丁寧にマッサージしてもらうとかなり気持ちいいし、身体に効く感覚がある。

但しマッサージにはかなり上手い下手がある。

不慣れな人に多いのだがやたらと力を入れてギューギュー押す人がある。背骨というのは大切な神経が通っているところなのでくれぐれも注意して行うべきである。しかも強く押すと身体は防御反応で却って硬くなってしまう。あくまでソフトに、相手の身体にジワーッと沁み込ませるように押さえる。

やはり夫婦や親子など気心のしれた者同士でお互いに行えたら理想的だろう。スキンシップというのは人間関係を深める上でもとても良いものである。

※【参考】

山口令子「日本一の健康法」(史輝出版・絶版)

アイズワイズ気功教室 気の世界 http://www.kinosekai.jp/