『おくりびと』なんていない?いらない?

    願わくば 花の下にて 春死なん 
      その如月(きさらぎ)の望月(もちづき)の頃  西行


 昨日、西行の歌のことを書いたら、本日の新聞広告には桜のもとに永代供養墓という広告が。名づけて「桜下庭園樹木葬」(おうかていえんじゅもくそう)。いろんなのがありますね…
  
     【京都天ヶ瀬メモリアル公園】http://948518.jp/

 もっとも私は「桜の樹の下には死体が埋まっている」という梶井基次郎の一節を連想したが、考えすぎかか。この作品自体は傑作だと思うが。

     【「桜の樹の下には」】http://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/427_19793.html


 アカデミー賞の受賞で相変わらず人気なのが「おくりびと」である。

 来月は地元でも上映会がある。住職夫婦にも観せてあげたいと思っている。何でも地元の老人会で大挙して出かけるそうである。お年寄りはどちらかというと「おくられびと」か…。いやいや、だれもが「おくりびと」であり「おくられびと」なのだ。もちろん私自身も。

 本日、立ち読みした「FLASH」(光文社)《3月31日号No1045号》には「おくりびと」の納棺師に対する批判記事が載っていた。

 映画のクレジットには「納棺協会」という名前があるが、これは札幌にある「(株)札幌納棺協会」という一企業に過ぎないという。「納棺師」という言葉自体もこの企業の造語なのだそうだ。どうりで聞いたこと無い訳である。

 先日の霊場会でもこの映画のことが話題になった。

 ひとつの批判はこの映画にはお坊さんも牧師さんも出てこない。つまり死というもの、あるいは葬儀というものが宗教と切り離されてしまっているというのである。

 だが、この映画には死者を送る、家族、知人達の様々な想いがきちんと織り込まれている。その意味では死について、家族について考える良い切っ掛けになると思う。多くの人に観て貰いたいと思っている。