『寺』と『院』の不思議な関係

【お知らせ】

本日、HPを少々更新致しました。
ご笑覧下さいませ
http://ujimaccya69.hp.infoseek.co.jp/



8日に西国観音霊場松尾寺で卯月八日の行事が行われた。

こういう場合、私達若手のお坊さんは準備や後片付けを手伝うのだが、時々、門前にある流々亭という素敵なお茶さんでコーヒーを飲んで休憩する。休憩が長いという声もちらほら…

【流々亭HP】http://rurutei.net/

時々、無愛想なお店というのがよくあるが、このお店は姉妹で営んでおられて明るくて、良く気の付くお二人にもてなして頂けるので誠に有難い。

このお二人とお話していたらこんな質問を受けた。


お寺の名前に付く『寺』と『院』はどう違うのか


なかなか難しい質問だが、一般の方からよく聞かれる質問である。
「『院』というのはお寺じゃないんですか?」とまで聞かれた。ウチも金剛院という名前で一応『院』のつくお寺なのだが(笑)…


答えその1

『寺』=『院』という場合。
金剛院というお寺は全国に沢山あるし、金剛寺というお寺も沢山ある。
寺院の名前の末尾に『寺』や『院』をつけるのが一般的だが、(他にも『堂』『坊』『庵』などという名前の寺院もある。)この場合、どちらでも同じである。


答えその2

また多くのお寺は『○○山××院△△寺』のように『山』『院』『寺』の3つの名前を持つ場合も多いが、大抵は『院』『寺』のどちらかが通称となる。どちらが通称になるかは慣例のようである。英語のファーストネームとセカンドネームみたいなものだろうか。


答えその3

昔のお寺は広大な寺領の中に沢山の建物やお寺が建っていることがあった。中には数十〜100を超える建物を擁するお寺もあった。
本堂以外にも個別に神仏を祀ったお堂や僧侶の住居などである。その建物を『院』『坊』『庵』などと呼んだのである。
そして、これら全体の総称として『寺』を使うことが多かったようである。

分かりやすく言うと東京ディズニーランドの中にスペースマウンテンとかカリブの海賊、といったアトラクションが点在しているようなものである。(ちなみに私が一番好きなのはスターツアーズである。とても楽しいのだが、終わると船酔い状態で気分が悪くなるのが欠点である)。いうまでもなくディズニーランドが『寺』でそれぞれのアトラクションが『院』である。

ところがこうした大きな『寺』が衰退して中の建物がどんどん減ってくると、その中で残った主要な建物が実質的にお寺全体とイコールになってくる。

ウチのお寺は『慈恩寺』という名前があったが、境内の中で最も大きな建物が金剛院という名前だったらしい。現在は金剛院が通称になっている。

ディズニーランドのアトラクションがどんどん閉鎖されてスターツアーズだけになったとしよう(笑)
こうなるとスターツアーズのことをディズニーランドと呼んだり、ディズニーランドという名前が無くなってスターツアーズという名前だけ残ることもあるだろう。

全体の名前である『寺』が残るのか個別の建物の名前である『院』が残るのはケースバイースでどちらもありである。


もっとも全国には数万のお寺があるのでこうした説明が当てはまらない場合も多いに違いない。お寺の歴史も名称もなかなか奥が深いのである。

 
 ちなみに明日は一年ぶりの団体参拝である。どうなりますことやら…