カブトムシのご縁

 一ヶ月ほど前にコンポスト容器に入っている堆肥を切り返そうとしたら甲虫の幼虫が沢山出てきた。全部で20匹はいただろうか。どうやらコンポストの蓋を閉め忘れた間に卵を生みつけたらしい。

 とりあえずそのままにしておいたのだが、堆肥を使うことになったので、殺すのも可哀想だと思案した。思いついて母校の小学校へメールをしてみた。

 「理科担当教員様」という宛名にして「理科の観察などで使われるなら差し上げます…」と書いて送ったら早速、電話があった。

 電話は理科の先生からかと思ったら教頭先生で、「これから校長が引き取りに伺います」とのご連絡だったので少々恐縮した。

 軍手をはめて長靴を履いてやって来られた校長先生は随分若く見えた。
 私が子供の頃、校長先生といえば雲の上の存在だったが、恐らく私と一回りくらいしか違わないのではないだろうか。自分が歳をとったことを実感した次第である。


 コンポストを取り除けて、堆肥を崩すと、丸々した幼虫が13匹出てきた。
 実は校長先生は昆虫が大好きで、学会にも入って居られるとのこと。校長先生によれば幼虫はカブトムシのものだと判明した。


 ちなみに今、母校の小学校で飼われている生き物はアリジゴクだけだとか…

 随分と地味な飼育である(笑)私が小学生の頃はニワトリやウサギや亀などいろんな生き物が飼われていたと記憶しているのだが、最近はいろんな制約があるとのこと。

 学校では丁度、クワガタでも飼おうと計画されていたところだったそうで、普段からタイミングの悪い私にしてはタイミングが良かったことになる。


 校長先生は子供の頃、担任の先生に「ファーブル昆虫記」を読んでもらって、それ以来、昆虫が好きになられたとのこと。

 多感な時代にいろんな生き物の命に触れることは大切だと思う。とりわけ最近の子供達はゲームやパソコンなどとてもバーチャルな世界にどっぷり浸かって生活しているのでちょっと心配である。

 カブトムシとのご縁が子供たちに良い結果をもたらすことを願っている。