今世紀最高の苦笑い

 【山寺の本棚】
 妊娠中の妻は出産関係の本をよく読んでいる。
 タレントの三船美佳氏が自分に出産について書いた本の中にこう書いてあったそうだ。

 生まれたばかりの赤ん坊は笑福亭鶴瓶ガッツ石松のどちらかに似る

 どちらもイヤなんですけど…

 昨日は妻の定期健診日。最近は超音波でお腹の中の赤ちゃんを観ることの出来る機械があって、そればかりか、お腹の赤ちゃんの写真まで貰えるのである。妊娠も後期に入り、赤ちゃんの顔付きもいよいよはっきりしてきたのだが、妻が病院で貰って来た写真を見ると

 ガッツ石松系の顔。しかも女の子…

 思わず苦笑いである。

 閑話休題。しばらく前にイスラム圏に居た欧米人の女性がぬいぐるみに「マホメット」と名づけたことが大問題になり、この女性は大衆にリンチされそうになったそうである。
 アメリカ映画でも自分の信じる宗教をバカにされて大喧嘩になるシーンを見たことがあるが、少なくとも日本人以外の民族にとって宗教や信仰というのは、心の深いところに通じた問題で、軽んじることはタブーであることが多い。

 先日、中古書店「復活書房」で「聖☆お兄さん」という漫画を見つけた。

聖☆おにいさん(1) (モーニング KC)

聖☆おにいさん(1) (モーニング KC)

 現在は6巻まで発刊されているらしいが、この漫画はお釈迦様とイエスキリスト様を主人公にしたギャグ漫画なのである。作者は中村光氏。偶然だろうがペンネームからして仏教学の泰斗であった中村元先生に似ているではないか。

 世も末と言おうか、日本以外では考えられない内容である。何しろ、下界に降りた御二人が東京の立川で小さなアパートをシェアして慎ましやかに暮らしているというシュールな設定なのである。

 お釈迦様が手塚治虫の「ブッダ」を読んで感動されたり、イエス様がMIXYやっておられたり、二人で銭湯へ行って帰りにコンビニでアイスを買って食べたりされるのである…

 ギャグ漫画なのだが、どこか御二人の純粋さ、真面目さが伝わってくる。単に宗教をネタにしただけの漫画ではないようにも感じる。

 この漫画の中に「今世紀最高の苦笑い」という台詞があったが、仕事がら笑ってはいけないと思いながらも、ついつい何度も笑ってしまった。微妙な苦笑いである…

 こうした漫画が生まれた背景にあるのは日本という国が宗教や民族意識といった規範意識が極めて緩いということの表れであると思われる。そもそも日本の漫画の自由で奔放なダイナミズムな表現というのは間違いなく、こうした緩い精神土壌につながっている気がする。

 昨日は突然パソコンが動かなくなり更新を休んだが、案外、罰当たりな漫画を読んで笑った報いなのではとひそかに心配している…