三千院への道

 本日は京都大原にある三千院というお寺で霊場会の総会があった。

 【三千院HP】http://www.sanzenin.or.jp/


 数年前にやはり三千院で総会が在ったと時に始めて大原に行ったのだが、門前を20代の大大原女が二人歩いていてちょっと感動した。だが、後から観光客に大原女の扮装して大原を歩かせるサービスがあると聞いてがっかりした。
 観光客のコスプレに感動してた私って…

 総会は三千院の境内にある円融坊という塔頭(「たっちゅう」。お寺の中にある分院)の中で行われたのだが、庭園がとても綺麗だった。

 総会の後、境内を散策すると「わらべ地蔵」というかわいいお地蔵さんを発見。ちょっと和みました。


 山寺から三千院に行くには一旦、福井の小浜方面に抜けて、そこから鯖街道を南下する。

 京都府から福井へ抜けて小浜に至るには国道27号線を走る。
 このルートは私や妻のお気に入りの道で時々ドライブに出かける。
 この道を走ると、左手に時折海岸線が見え、右手には山並みが続く。そして理由はよく分からないのだが空がとても広く、すぐ頭上に天を頂くようか感覚がある。車で走っていてととにかく開放感がある。特に、時々垣間見える海岸線がとても美しい。好天でも、雨でも、夕刻でも折々の美しさがある。

 山寺を出て1時間ほど走ったところで、海岸線を見下ろす高台に出た。
見覚えのある光景だった。20年ほど前はそこに自販機の並ぶ無人の休憩所があったことを思い出した。休憩所は無くなっては今ドライブインに変わっていた。

 
 20年ほど前、何度も大学入試に失敗し、家で鬱々と過ごしていたことがある。
 週に一度ほど母親に弁当を作ってもらうと、自転車に乗って27号線をひたすら走った。

 私が見覚えがあると思った場所は昔、弁当を食べた休憩所のあった場所だった。車で小一時間ほど走った場所にある訳だから当時はかなりな距離を自転車で走っていたことになる。

 痩せて、暗い眼つきをした私が、安物のママチャリを漕ぎながら何を考えていたのだろうか…と懐かしいような切ないような感慨が湧いた。

 その時思いついたのは、当時傷心を感じていた私が間違いなく、この海岸線の風景に心を癒されていたのだということである。

 将来への希望も無く、友達も無く、お金もない、彼女も居ない…そんな私をこの風景は癒してくれていたことに気づいた。

 
 心が閉塞した時は身体を動かしたほうが良い。
 ある時点から身体を動かすという気力さえ湧かなくなってくるからである。そうなると回復にかなり時間が掛かる。
 軽い心の鬱屈というのは身体を動かしたり、太陽に当たったり、自然の風景に接することで随分と軽くなるものである。案外お寺に行くというのもいいかもしれない。古い建物なども何か心を和ませてくれる。

 当時の私は心にもやもやしたものが溜まってくると、ママチャリに乗って海岸線沿いの国道をひたすら走った(笑)心と体の処方箋としてはそれほど間違っていなかったことになる。

 三千院からの帰り、同じ27号線を走った。所々で目に入る綺麗な海岸線を見ながら、もしこの風景が無ければ自分はもっと大きく挫折していたかもしれないと思うとその風景に感謝の念が湧いた。

 
 この道は天候が変わりやすく、何度も何度も雨が降ったり、止んだりする。その日も数え切れないくらい何度も雨が降っては止んだ。