極楽の百年の修行は穢土一日の功徳に及ばず  美輪明宏「紫の履歴書

【山寺の本棚】



写真付年賀状の印刷が間に合わなくなり思い切ってプリンターを買った。やってはいけないと思いながら後から価格.COMで値段を調べたら、地元の量販店で2万だったcanonnのプリンターが5000円も安く売っていた…ちょっとがっかりである。

一緒に購入した年賀状ソフト「筆まめ」がとてもよく出来ていてほんとうにサクサクと年賀状が作れてしまう優れものである。といっても主に作業するのは妻なのだが…

毎月28日はお不動様の日で、明日は今年で最後のお勤めがある。それが終わって正月用のお餅を作ればひと段落である。

紫の履歴書

紫の履歴書


先日、ブックオフで三輪の半生記「紫の履歴書」を100円で購入。

ブックオフの店内で手に取ってパラ読みしたら止まらなくなった。

まず文体が妖艶である。三島由紀夫が絶賛というのも頷ける。この作品は一級の文学書といっていい。
私は三島由紀夫が好きではないし、美輪氏も好きではない部分が沢山あるあるが、とにかく本書の内容は壮絶な人間観察の記録である。

人間の上辺ではなく、腹の底、魂の最奥にまで踏み込んで人間を見据えた記録なのである。
恋愛や憎悪や葛藤や欲望に翻弄される人間を傲然と見下ろし、また自身もその中に身を投じる。人間の愚かさも美しさも醜さも、賢さも全てが詰まっている。

地獄も餓鬼も畜生も阿修羅も経て、人界から天に昇る…そんな壮絶な人生である。
長崎の花町に生まれ、母を亡くし、父親と葛藤し、水商売、芸能界、貧困、栄光、挫折、信仰…生々流転の果てに一生を振り返れば、それら全ての経験が溶け合ってえもいわれぬ紫色に変じる…そんなことを想像した。


若い世代を見ると私には誰もが同じ顔、同じ感性であるように見えて眩暈のような感覚を覚えることがある。
いつの頃からか、<自分らしく>とか、<個性>とかが言われるようになった、それに反して、日本人はどんどん輝きを失っていたのではないか。

生きることへの執念。そしてその執念が単なる欲望や自我にとどまらずもっと別の何かを目指すとき、本当の個性が現れるのではないだろうか。

繰り返しになるがこれは一級の文学作品である。
だがとても強い毒がある。その毒に当たる覚悟があるならその毒はとても甘美である。


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