お寺と古い年中行事

お寺とは何かというと、いろんな答えがあるだろう。実際にお寺に暮らす者としてはいろんな年中行事をひとつひとつ執り行っていくのがお寺の暮らしであるというのが実感である。

1月18日は兼務している多禰寺から海のそばの三浜(みはま)という漁村にあるお寺へ出かけて祈祷するという行事が行われる。
この行事はおそらく数百年続いていると考えられるが、面白いことに正式な名称が伝わっておらず、ただ「三浜の祈念」とだけ呼んでいる。

三浜にある禅寺で祈祷を行い、ご祈祷したお経を経箱に入れて、一軒づつ家々を回る。
お経を持って歩くのは子供2名で、裃(かみしも)を着けている。なんとも古式床しい行事である。真言宗のお寺の僧侶が禅寺で祈祷するというのも不思議な光景だが、これにもいろんな由来があるようである。

この禅寺のご住職は地元の民俗や歴史に詳しい方で、いつもいろんなことを教えていただくのだが、この行事でお逢いする度に、是非、この貴重は行事をこれからも伝えていきたいと語って下さる。

地元にさまざまな年中行事があるが、これを伝えていくにはいろんな苦労がある。

この祈念は1月18日と決まっていて、平日の場合、世話役の方は仕事を休まなければならない。お経を持って歩く子供達も学校を休まなければならない。それだけでも大変である。

お経を持って歩く子供もどんどん数が減って、来年からは女の子にしようという話もあるくらいである。

祈念の後は食事が出るが、この地域特有の食材や調理法がある。(新鮮なワカメの和え物や豆腐をつかった膾(なます)が絶品である)こうした料理も本来なら年寄りから若い世代に伝えていかなければならないのだが、若い女性は村の外に働きに出ていることが多いし、昔のように年寄りの言うように年中行事を手伝ってくれることも少ないそうである。


かってはお寺の行事というのは村や地域全体で行ったものである。

宗教行事であると同時に楽しみの少なかった時代には貴重な娯楽であり、またそれらを通じて、人々のつながりが深くなった。

だが人々は地域のつながりと離れた暮らしをするようになり、そうした行事を無理に行うにはいろんな負担がかかることも多い。

古いものを伝えていくために形を変えることは必然なのかもしれない。

これから先、どのくらいこの行事を伝えていけるだろうか定かではないが、これからどうしたものか…そんなことを時々考えることがある。


【告知】
2月3日午前10時より節分祈願祭が行われます。年に一度の本尊波切不動明王様ご開帳の機会です。祈願お申し込みはお早めに願います。(当日参拝できない方、遠方の方には後日、御札を送らせて頂きます)詳細はHPにて。→http://ujimaccya69.hp.infoseek.co.jp/




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