「葬式は、要らない」VS立ち読み男 その1
住職夫婦は朝から仏教会の旅行へ。
山寺は2世帯が完全同居なので、たまに住職夫婦が出かけてくれるのは有難かったりする(笑)
朝食の時に妻が
「お昼はお惣菜のコロッケでもいい?」
と聞くので
「大丈夫!コロッケ大好き。君と同じくらい大好き」
と言ってみた…
京都新聞(←やや左傾)の朝刊を見ていたら新刊の広告が大きく載っていた。
タイトルは「葬式は、要らない」。なかなか衝撃的な本である…。既に14万部も売れているという。
- 作者: 島田裕巳
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/01/28
- メディア: 新書
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「葬式は、いらない」だと「葬式はいらないが、別の○○○は必要だ」というニュアンスを感じる。
もうひとつは
「葬式?(一拍間を置いて)あんなもの要らない!」みたいにかなり強く否定している感じである。
さて広告にはこんなことが書いてある
『葬式は贅沢である。葬式の先にある理想的な死のあり方。本当の葬式とは何か!』
『日本の葬式費用・平均231万円!イギリス12万円、韓国37万円と比較して桁違いに高い。浪費の国アメリカでさえ44万円だ』
ところで島田氏はキリスト教の葬式と仏教の葬式を同じ葬式として金額だけ比較しているのではないか。(韓国もキリスト教の入信者が大変に多い。)そこがまず引っかかる。
「浪費の国アメリカ」とあるが、「葬式は贅沢である」というのが本書のひとつの趣旨のようである。
私はアメリカ人というのは敬虔な国民であると思っている。
アメリカ国民の何人かに一人は毎週教会に行く。そしてアメリカ人は教会に対して頻繁に財施や寄付を行う。
日本人の葬儀費用を桁違いに高いと言う前に、アメリカ人と日本人が宗教に対して一生涯のうちにどれくらいお金を費やしているか比較するべきではないだろうか。
私は時々、住職から昔のお葬式の様子を聞くことがある。
昔のお葬式というのは大変に人手のかかるものだった。だが人手については同じ地域のものが総出で手伝い、費用についても香典によってかなりの部分が相殺されていた。
日本には香典という習慣があり、葬儀費用の一部は香典によって相殺されるようになっている。
日本人は世界一貯金の好きな国民であり、貯金という蓄えによって多額の出費が可能である。このことが葬儀や結婚式が高額化する要因のひとつではないかと思う。自分の貯金をどう使うかは個人の価値の問題である。
もうひとつはバブル経済期に一気に<高額化>というスタンダードが作られたのではないかという点。これは反省されてもいいだろう。
往時は地域が手伝って自宅葬儀を行うことが主流だったが、様々な理由から葬儀会社のホールでの葬儀が中心になりつつある。地域住民のお手伝いや地域で保有していた葬儀用具(祭壇など)が葬儀料金に組み込まれたことが高額化のひとつの要因だろう。
あんまりすごそうな本だったので、夕食が終わってから近くの本屋で少し立ち読みした。
買うのも癪に触るので…
島田氏の葬式批判の論点のひとつは葬儀の高額化であり、もうひとつは戒名のようである。戒名は仏典に根拠が無い日本独自のものであり、その戒名に高額な布施を払うのはおかしいというのである。
島田氏がひとつの解決策としてあげているのは
「戒名を、家族や自分でつける」
というものである。
自分達で戒名をつけたらお坊さんに高い戒名料を取られなくてすんだ
…それなんかおかしくないですか?私は唖然としましたけど。
戒名は仏典に根拠が無いというなら、徹底して戒名をつけないということを主張すべきではないだろうか?
なぜ戒名を自作するという方向に行くのか…
そもそも戒名とはお坊さんが授けるものである。伝統仏教の定められた宗儀の中で生み出されるものである。
島田氏が戒名を自作しましょうというのはお葬式でお坊さんの代わりに親戚の誰かが頭を丸めてどこかのお寺で借りた衣と袈裟を着けて座って「般若心経」でも読んでもらえば…
お坊さんへのお布施はいりません。よかった良かった…
ということと同じではないだろうか。
戒名を自作したら戒名料は要らないというのは滑稽です。
それは無宗教で自己流の葬儀を行って、その中に仏教の戒名風のものを付けるという演出をやるというにすぎないということである。そのこと自体は個人の自由だが、戒名を自作したら戒名料はいらないと宗教学者が平然と言うのは根本的な認識不足です。
寺院によっては戒名料といわずに祀堂金というところもある。
また戒名料そのものが無いところもある。
戒名料という名目があろうがなかろうがそれらは布施と考えて、布施について論じるべきであるのに、ことさら戒名にこだわるから論点がズレるのではないだろうか。
もうちょっといろいろと書きたいが、面倒くさくなってきましたのでこれにて…
ま、立ち読みですから。
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