『東映城』と斬られ役

【山寺の本棚】

不順な天候がひと段落した。本日は快晴だが風が少し強い。

午前中、法事があった。家でのお勤めの後、山手のお墓に墓参に行こうとすると風に白いものが一片舞っていたので雪かと思ったら梅の花びらだった…

伝説日本チャンバラ狂 名作時代劇おもしろドキュメント

伝説日本チャンバラ狂 名作時代劇おもしろドキュメント

先日読んだ「伝説日本チャンバラ狂」も面白かったが、アマゾンで購入した福本清三「どこかで誰かが見ていてくれる」をアッという間に読み終えてしまった。

早速、続編を購入の予定。ブックオフオンラインで450円で販売されているのを発見。

「おちおち死んでられまへん ―斬られ役ハリウッドへ行く」(創美社

おちおち死んでられまへん―斬られ役ハリウッドへ行く

おちおち死んでられまへん―斬られ役ハリウッドへ行く

なぜか心に何か引っかかっていたのだが、昨日になって自分が福本氏のドキュメント番組を見たことがあることを思い出した。ネットで調べるとすぐに判明した。

NHK総合にんげんドキュメント』「斬られ役 〜大部屋俳優58歳の心意気〜」


放映されたのは2001年5月であるから、もう10年近く前になる。記憶が残っていたということはよほど面白いと感じたのだろう。

当時58歳だった福本氏が映画「RED SHADOW赤影」の撮影に臨む様子を記録したドキュメントである。
私が子供の頃見たTV版「仮面の忍者 赤影」は滅法面白い勧善懲悪の番組だったが、映画版の「RED SHADOW赤影」では正義の味方である赤影は人を殺さないという設定なのである。そのため悪役=斬られ役の福本氏はご自分の得意とする斬られる演技を封じられてしまうのである。そのなかで福本氏がどのように役作りに望んだか…

確かそんな内容だったと思うが。福本氏の誠実な仕事ぶりが伝わってきたのを記憶している。もう一度見てみたい番組である。

福本氏のファンの運営されているサイトも存在する。

名脇役福本清三http://cozalweb.com/seizo/

このサイトによれば当地舞鶴でロケが行われた「バルトの楽園」にも福本氏は出演されている。舞鶴にも来られたことがあるのだろうか…

「どこかで誰かが見ていてくれる」の中で福本氏は「東映城」という表現を使われている。
全盛期の東映というのは凄かったという。綺羅星の如く居並ぶスター、美人女優、悪役、子役、歌手、それをとりまく数百人の大部屋俳優、スタッフ、名監督…それらを指して「東映城」と言われているのだが、「城」という表現がぴったりすぎて唸ってしまった。その当時の熱気が伝わってくるようである。

福本氏がなぜ40年余りもの間、斬られ役に徹することができたのか…

謙虚でひたむきな人柄はいうまでもないが、実は東映をはじめとする映画界に存在した巨大なエネルギーのようなものが福本氏自らの意思を超えて働いたのではないか…と感じるのである。

日本の映画人口は最盛期で年間11億人を突破し、映画は娯楽の王者であった。そして東映時代劇はその地中心だった。俳優、スタッフの熱意、観客の熱狂…そういったものが人間に眼に見えない力として働いていたのではないだろうか。

一個人の情熱が世の中を大きく動かすことがある。同時に社会や物事のもつ得体の知れない力が個人を押し包み、突き動かしていることがあるのかもしれないと思うことがある。

坂本竜馬が時の人となって大変な人気だが、幕末の志士達は偉大な情熱と使命感に生きた人達であったと同時に時代も持つ何かに突き動かされて、若い命を燃焼させていったのではないだろうか。

そんなことを考えると人間というのはとても不思議な存在に思えてくることがある。

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