「赤めだか」と<少年時代>
今日、久しぶりに晴天だったので薪割りをしたのだが、ふと思ったのは自分が健康であることがとても有難いということである。
40代後半になり歳相応に身体のあちこちガタが来ているが、とにかく五体満足で健康であることにまず感謝すべきだということに気がついたのだ。なぜそう思ったかというと立川談春「赤めだか」の中に落語を志しながらパーキンソン病にかかった 春風亭栄橋氏のエピソードが載っていたからだ。
自分が何かをやりたいと思って
もう少し健康の維持管理に努力しようと思ったのである。とどこおりがちだった気功やヨーガをまたきちんとやる気になった。
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漫画の世界では主人公が少年時代の頃が一番面白いという法則のようなものがある。
理由はよく分からないが、主人公が成長してしまうと途端に面白くなくなることがある。「月刊少年マガジン」の「鉄拳チンミ」なんか未だに少年ぽい(笑)
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それに加えて師匠である立川談志師匠の強烈なキャラクター。
このふたつが重なるのだから面白くないわけがない。
例えば談志師匠は一度に大量の用事を言いつけるのだそうである。
「二階のベランダの窓の桟が汚れている、きれいにしろ。葉書出しとけ。スーパーで牛乳買ってこい。庭のつつじの花がしぼんで汚ねェ、むしっちまえ。留守の間に隣の家に宅急便が届いている、もらってこい。枕カバー替えとけ。事務所に電話してこの間の仕事のギャラ確認しとけ。シャワーの出が良くない上にお湯がぬるい。原因を調べて直せ。どうしてもお前達で直せないなら職人を呼ぶことを許すが、金は使うな。物置に写真が大量にある。外枠の白い部分が俺は嫌いだ、きれいにカットしろ。豚のコマ切れ百グラム買ってこい。戸袋に鳥が巣を作ったようだ、うまく処理しろ、これは談々にやらせろ。スリッパの裏が汚ねェ、きれいにふいとけ。家の塀を偉そうな顔して猫が歩きやがる。不愉快だ、空気銃で撃て。ただし殺すな重傷でいい。庭の八重桜に毛虫がたかると嫌だから、薬まいとけ。何かさがせばそれらしきものがあるだろう。なきゃ作れ。オリジナリティとはそうやって発揮してゆくものだ」(「赤めだか」より)
恐ろしいことに談志師匠は言い付けた用事を全て覚えていて、一日の終わりに全てチェックが入るのだという…
噺家としての修行の大変さがひしひしと伝わってくる。
本山に居た一年間というのが私にとっての前座修行でありお坊さんとしての<少年時代>のようなものかもしれない。
怖そうな監督のお坊さんに
「ごぉるぁあああ」
とか怒鳴られたりするのは日常茶飯事だった…青白い顔をしていっぱいいっぱいで言いつけられたことを必死でやっていた。自他共に認める不器用で要領
が悪くてのんびりした人間なのでどれだけ痛い目にあったかわからない。
そんなことを思い起こしていると<少年時代>に私たちが引かれるのはその真剣さと純粋さではないかという気がした。
日常の生活に埋もれていくということは、自分が真剣でなくとも純粋でなくても、やっていけるということであり、むしろそういったことは邪魔になることすらある。
だからこそ人は<少年時代>に憧れるのかもしれない。
時々本山に居た頃を思い出す。あれほど大変なことはなかったと思う一方で無性に懐かしくなることがあるから不思議なものである。
【立川談志HP地球も最後ナムアミダブツ】http://www.danshi.co.jp/topics.htm
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