うつというパラドックスを抜け出すために
【山寺の本棚】
- 作者: 野村総一郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/19
- メディア: 新書
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「うつ病をなおす」の5章はうつ病にかからないための性格改善法について述べられている。これは私たちにとってもあてはまるのではないかという気がする。
ここに挙げられている
『ウツ的思考パターンの修正』
という部分は、私たちの日常にも少なからず有益ではないかと思うのでリライトしてみる。ここでは
『セールスで外回りをするたびに失敗してすっかり自身をなくしたセールスマン』
が取り上げてられている。
セールスの失敗が続いたときに「自分には才能がない」「何をやってもダメな人間だ」と考えてしまうとすると、前者は「肯定的側面の否定」であり、後者は「結論の飛躍」である。
この
「肯定的側面の否定」
「結論の飛躍」
というのが筆者の言う「ウツ的思考パターン」である。
そして筆者が挙げている<別の考え方>というのは次のようなものである
・自分の商品をすごく気に入ってくれる客もいるし、自分は全く無能とは言えない
・今は不景気だし、誰がやっても難しい
・商品の方にそもそも無理がある
・まだ初心者だし、こんなもんだ
・自分はこの商売に向かないかもしれないが、経理は得意だ
・人間には運の流れがあるから、今に運が向いてくる
私たちは誰もがなんらかの思考パターンに囚われて生活している。
それが先鋭化したり、極端に自己否定的になっているのがうつの思考ではないかという気がする。
時々、精神病院に入院している患者さんから電話がかかってくる。
その方の話を聞いていると、相手の方の世界というのがとても狭いという感覚を受けることがある。この感覚は一体何のだろうかと考えることがある。
私たちは多かれ少なかれ自らが作り上げた世界、自らが作り上げた論理の中で生きているのだろう。
その世界や論理が破綻したとき心が折れてしまうというのが心の病の大きな原因や背景ではないかという気がする。
自分の世界をいかに広く、深く築くか。自分の世界がいかに柔軟で安定したものであるかということが心の健康にとってとても大切ではないかという気がする。それはおそらくその人の持っている自然に対する感覚や実体験とつながっているのだろう。
かくいう私自身、何に囚われているのか、それは私自身にもよく分からない。
自分自身の姿が一番見えないというのが人間の心の大きなパラドックスではないかとしみじみ思うことがある。
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