恐いお不動さまの可愛い髪飾り

先日、年配の夫婦を宝物殿にご案内したのだが、大変感じ良いご夫婦でいろいろ話が弾んだ。

そしてこんな質問を受けた。

「お不動さんは可愛い髪飾りをされていますがどうしてですか?」

古い仏画や仏像というのは細部がはっきり分からないことが多い。
本堂のご本尊もお不動様なのだが、お不動さまが可愛い花の髪飾りをされているというのは不勉強でお恥ずかしいが、初めて知ったのである。

不動尊―浄化の怒り (信ずる心)

不動尊―浄化の怒り (信ずる心)

たまたま図書館で「不動尊  浄化の怒り」という本を見つけた。
不動明王について様々な角度から論じられている、大変貴重な資料である。


このなかに大変興味深い記述があった。


比較的古い不動明王は登頂に花の飾りのようなものを載せて、六花(りっか)と呼ばれるとある。
不動明王というのは「アチャラ・ナータ」=「不動の守護神」であるが、不動というのは雪山(エヴェレスト)に由来するのではないかと書かれてあった。
確かにエヴェレストのような泰山こそ最も不動なるものと言えるかもしれない。

そしてこの六花というのは雪の結晶を花に見立てた6つの花弁であり、雪の異称なのだという。頂部に雪を頂くということも正に雪山という点と符合するではないか。
(ちなみにヒマラヤとは「雪の住みか」の意味である)

ヨーガの鍛練法に身体を極力動かさないことで心身を活性化させる方法がある。
不動という名称はそのことと関係あるのではないかという妄説を抱いていた。(軍荼利夜叉明王がヨーガのクンダリーニを尊格化したものであるように)どうも全然見当違いだったらしい…


実はこの本を借りたのは波切不動明王について一節を割いて説明があったからである。
当山の本尊である不動明王は波切不動明王(非公開)であり、不動明王の中ではやや特殊な部類に属する。きちんと説明された資料がなかなか無いのである。

著者によれば波切不動明王は中国で作られたものではないかとのことだった。大変に謎の多い不動明王である。


先日、閉山後に宝物殿を拝観したいという電話があった。

用事があったので断ろうかとも思ったのだが、遠方からこちらを目指してきていて近くまで来ておられるというので了解した。
宝物殿に案内すると波切不動明王のお写真を熱心にご覧になっているので尋ねると、自分は身体に不動明王の彫り物をしていて、しかもそのお不動様は波の上に立っているという。
見せて頂くと、確かに背中に美麗な波切り不動明王が彫られていた。どうしてもこのお寺が気になってお参りしたくなったとのこと。少し不思議なご縁を感じた。

考えれば考えるほど不動明王というのは不思議な存在である。

火炎の光背を持ちながら、頭頂に雪のシンボルを頂く。
剣を持ち、戦う天部のようでありながら、甲冑は身に纏わず如来様のように簡素な衣帯。
どっしりと座って動かざるものという名前を持ちながら、一面、奴僕として使役される一面を持つ…


不動明王の恐ろしげなお顔は仏法に従わない者を恐ろしげな姿で脅して教え諭し、仏法に敵対する事を力ずくでやめさせる姿であるという。そして外道に進もうとする者は捕縛して正しい道に引き入れるという。現在の世界の混沌、日本の混沌こそ、正にに不動明王の現れるべき難化(なんげ)の時と言えるかもしれない。



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