経済学者の見たお寺 お坊さんの見たお寺

朝から断続的に雪、雪、雪…かなり積もってます。
一体、どれくらい積もるのか…


25日に善通寺で行われた教学講習会の2日目。

2日目は慶応大学商学部教授中島隆信氏による講演である。
タイトルは「経済学から見たお寺の将来像」。

中島氏は「お寺の経済学」という著書があり、寺院関係者から講演の依頼が多いそうである。他にも「大相撲の経済学」「オバサンの経済学」「障害者の経済学」など著書多数である。

お寺の経済学 (ちくま文庫)

お寺の経済学 (ちくま文庫)

大相撲の経済学 (ちくま文庫)

大相撲の経済学 (ちくま文庫)

オバサンの経済学

オバサンの経済学

障害者の経済学

障害者の経済学

現在、日本のお寺は約70000カ寺。コンビニが約40000軒であることを比べて日本の寺院がいかに多いかが分かる。お寺の数がコンビニより多いというのは私にも予想外だった。
(恐らく7万というのは統計上の宗教法人の数で、実際に活動していない法人も含めての数であると考えられる)

ところが様々な理由で寺院の数は100年後には現在の14分の1になるのではないか…というのが中島氏の推計である

実は推計の仕方にちょっと問題があるのだが(笑)、今後、寺院の運営が非常に厳しくなることは明らかであり、いろんな点で参考になるお話が多かった。

一番評価できるのは仏教への誤解に基づいて仏教を批判する方が多い中で、中島氏は謙虚に仏教を学びいろんな問題点を指摘されている点である。

葬式は、要らない (幻冬舎新書)

葬式は、要らない (幻冬舎新書)

昨年、宗教学者島田裕巳氏が「戒名は、要らない」という本を上梓された。

島田氏は本書の中で戒名は要らないと断じて、そのひとつの解決策はなんと戒名を自作するというものだった…島田氏は本書で大真面目に戒名自作の方法を指南しておられる。

本山から資格を付与された僧侶が葬儀という宗儀を執り行う中で生まれるのが戒名である。それらと全く無関係に一般人の作ったものが戒名として通用しないということが宗教学者である島田氏に理解できていないというのは抱腹絶倒の珍事だった…

中島氏は島田氏より遥かにまともな先生であるというのが率直な感想である。
ただ中島氏の分析の一番大きな問題は地方にとってのお寺と都市にとってのお寺を同一の「お寺」として分析している点ではないかと言う気がする。

都市に住む人々は菩提寺との結びつきが弱いか全く無い場合も多い。
寺院もサービス業の一種であり、多数の中から選択される存在である。寺院を他のサービス業と比較しようと意識も強い。葬儀をはじめとする宗教行為について良くも悪くも自由な考えを持っている。


一方、地方では先祖代々の菩提寺との結びつきが強固であり、単なるサービス業以上の存在である。

何代にもわたる結びつきの中でお互いを知悉しているからこそ、時間をかけて遺族をフォローすることもできるし、先祖代々という悠久のつながりの中に生きているという安心感を与えることができるのだと思っている。宗教上の慣習も地方や宗派によって様々だし、お寺に一体いくらくらいのお布施を払うかという慣行も地域によって雲泥の差がある。

中島氏が仰っていたのだが、サービス業なら料金を貰う側が御礼を言うが、お布施はお金を払う側が感謝を形にするものである…当然、受け取る側がその額を決めるのは難しい。

お寺をサービス業とみなすことには大きな限界があるのである。




これから20年でお寺を担う檀家は実質的に半分になるというのが私の予想である。

少子化と高齢化と過疎化、さらに継嗣が地方を離れて暮らすことによってお寺への帰属感が薄れ、菩提寺への意識も都会化するだろう。

言いかえると現在、お寺を物心両面で支えてくれている檀家さんの世代が恐らく最後の世代だろう。

私が住職の時期に日本のお寺のかなりの部分が廃寺や統合を迎える時代に直面するであろうことは想像に難くない。なかなか難しい時代である。
そんな時代であるからこそ、いろんな遣り甲斐があるのではないかと、最近は少し前向きである

そして、やっぱりお寺や仏教はあったほうがいいというのが私の中の結論である。

もちろんお寺を存続させることが絶対条件だと思っていない。人口減少という趨勢は変えようがないからである。




時代の大きな変化がだんだん見えてくるにつれ、先代住職と共にお寺支えてくれた檀家さん達に感謝を覚えずにはいられない。決して多くはない檀家さん達が一致団結して一生懸命お寺を護持してくれたからである。

この方たちに納得してもらえるようにお寺を運営しつつ、これからやってくる時代の変化に臨まねばならない…遣り甲斐は一杯ありそうである(笑)





講習会は誠に実りの多い2日間だった。

講習費も5000円(善通寺派以外の寺院関係者)。ちなみに善通寺派の方は僅かに1000円。
善通寺の関係者の方々が教学に力を入れられている姿勢にただただ感謝である。合掌




【告知 その1】

「生きがいの創造」シリーズの著者である飯田史彦先生の講演会を舞鶴で開催することが決定いましました。
期日は10月23日(日)。主催は舞鶴東仏教会です。詳細が決まりましたら、当ブログにて告知を行います。

[決定版]生きがいの創造

[決定版]生きがいの創造


【告知 その2】

2月3日午前10時より節分祈願祭が行われます。年に一度の本尊波切不動明王様ご開帳の機会です。(開帳は法要の間のみです)
祈願お申し込みはお早めに願います。(当日参拝できない方、遠方の方には後日、御札を送らせて頂きます)詳細はHPをご覧ください。http://ujimaccya69.hp.infoseek.co.jp/



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