分子生物学と大日如来とコラーゲン神話
- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/05/18
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本日は本山である仁和寺で教学講習会に参加。
教学講習会というのは勉強会を兼ねた講演会のようなものである。
本日の講師は青山学院大学の福岡伸一先生。
講習会の前に修行僧の居る寮に差し入れを少々。
出て来た若いお坊さんは20代だろうか、血色の良い顔をしていた。
来月の21日で修行期間が終わるので、この時期は指折り数えて自坊に帰る日を待つ。
大きな行事も無いので静かな楽しい時間だろう。
動的平衡論というのは、私達の身体はどんどん入れ替わっていて、分子レベルでは別の個体として再生され続けているということらしい。
巨大な砂時計があって砂が落ちるのと同じスピードで砂が補充されていると、遠眼には砂時計は動いていないように見える。
動いていないように見える砂の塊が私達の抱く個体のイメージ…そんな感じだろうか。
生命というのは不変の個体がドデンとあるのではなくて、分子レベルではどんどん入れ替わっていて、半年や一年もすれば別の個体といっていいほどになる。但し生物は絶妙なバランスをとって同一性を保っているのでその変化に気がつかない。
キチッと存在しているようで実は曖昧であり、存在が不確かであるという点は仏教の空観とも不思議な共通点がある。
質疑応答の時間になったが、やはりテーマが理系だったからか、なかなか質問が出なかった。
私が本山に居た頃の教学部長師が挙手されたので、さすが元教学部長…と感心。
一体、どんな質問をされるのかと思ったら
「植物に脳細胞はありますか?」
無いと思います。どう考えても…
お坊さんは文系集団なので理系のテーマは鬼門か。
- 作者: 村上和雄
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
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生物は無生物から生まれた。
その生物がこれほど多様かつ、精妙な動的平衡を保っていることは何か人智を超えた力(分子生物学者の村上和雄氏はサムシンググレートと呼んでおられる)によっているのではないか、村上氏のサムシンググレートについてどう思われますか?
とお尋ねしてみたら…
「村上先生は大先輩なのでコメントは控えさせていただきます」
人間関係を大事にされる方でした…
福岡氏の文章は独特の文学的香気と哲学的風貌があり魅力的である。
理系と文系をつなぐ稀有な存在である。
これまでの静的な生物観に対して、動的平衡論=動的な生物観を提示されたことについてお尋ねしたら、鴨長明の「行く川の流れはたえずして」という一節を引いて、動的な生命観は昔から存在していた…とサラリとお答になったので、ちょっとカッコ良かったです。
- 作者: 鴨長明,市古貞次
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閉会の辞は現教学部長師。
なんと理系の御出身なのだとか。
「宇宙の全ては針の先ほどの空間がビッグバンによって膨張して生まれました…これは大日如来だと思います」
…って、それはちょと違うと思うのだが。
真言密教の本―空海伝説の謎と即身成仏の秘密 (New sight mook―Books esoterica)
- 出版社/メーカー: 学研
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そして全宇宙がビッグバンから生まれたということは、宇宙に存在する全てはビッグバンから生まれた同胞であり、間違いなく共通する何かを持っていることになる。しかも、全ての個体は動的平衡によって常に分子レベルで交流、交換を繰り返している…
宗教と科学がいつか一致する日がくるのだろうか。
ひとつ困ったことが起きた。
福岡先生についてネットで調べていたら、福岡先生はコラーゲン入りの食品を摂っても身体のコラーゲンにはならないと主張されているそうなのである。
コラーゲンを摂ると肌に良いとされているが、身体に摂取されたコラーゲンは消化酵素によってバラバラのアミノ酸として吸収され、体内でコラーゲンを合成する原料にはならないし、コラーゲン配合の化粧品もそのまま肌から吸収されることはありえないのだという。
このことを最近、コラーゲン食品を買ったばかりの妻に言うべきかいうまいか迷っている。
夫婦関係もまた微妙な動的平衡の世界なのである。
【告知】
「生きがいの創造」シリーズの著者である飯田史彦先生の講演会を舞鶴で開催することが決定いましました。
期日は10月23日(日)。主催は舞鶴東仏教会です。詳細が決まりましたら、当ブログにて告知を行います。
- 作者: 飯田史彦
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