マムシの夏 密教という不思議なデジャヴュ
お盆を過ぎて急に気温が下がった。
少ししのぎやすくなって有難い。
昨年はこの時期も猛暑が続いていたように記憶しているので、今年はようやく平年並みに戻ったのかもしれない。
老僧が雑木の処理に行ってマムシを一匹捕まえてきた。
それにしても今年はマムシが多すぎる…
ここ2週間ほどで10回近く身近にマムシを見聞きしている。
そのうち老僧の捕獲したのが6匹…
気候のせいなのか、それとももっと別の理由なのかは不明。
自然というのは四季という規則正しい循環を持ちながら、同じ夏でも冷夏や猛暑があるように少しづつその相貌を変える。都会のような人工的な環境に居るとなかなかそのことを実感できないだろう。
ちなみに老僧はマムシを懇意にしている檀家さんにあげるのだそうだ。
田舎ではマムシを欲しがる人が結構いるのである。
マムシは滋養強壮、毒消し、傷薬などとして重宝するそうである。
本山である仁和寺からも仏像が出展され、そのご縁で末寺の私のところにも今回の特別展の招待券が届いた。
さすがに東京まではいけないので東京の友人に送って名代をお願いした。
お盆が終わって読書モードへ。
相変わらず雑読、漫読である。
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「秘史 密教のすべて」を読了。
かなり突っ込んだ内容を分かりやすく書いてあるが、これだけ読むと密教を誤解する人があるやもしれないという気がする。ちょっと危険な一面もある。
ただこれまでの密教関係の書物で触れられなかった部分に言及していることは評価できるだろう。
例えば空海といえば虚空蔵求聞持法を修したことが有名である。
虚空蔵求聞法とは虚空蔵菩薩の真言を満願までに100万回唱えることで超人的な記憶力をはじめとする偉大な功力をさずかるとされる修行法である。
空海は四国の大自然の中でこの法を修して、明けの明星が口に飛来するという霊異を体験したことで知られる。
ところがインドの修行法について調べると、インドではマントラを無数に唱えることで、偉大な記憶力を得るという法が伝えられていたということが分かる。
虚空蔵求聞持法がその流れを汲む修行法であることは明らかであろう。
密教を尋ねようと思えばどうしてもインド的なるものに触れざるを得ないというのが正直な感想だが、現在の密教の研究ではこの分野が非常に手薄なので自分なりの密教マップのようなものを頭に描きつつ手探りで進んでいかねばならないことになる。
ここら辺が難しくも、面白く、また遣り甲斐のあるところである。
「密教」、「真言宗」、「空海」…といったキーワードには膨大な先人の研究があるが、実は大きな空白地帯がいくらもある。驚天動地の事実がまだまだ埋もれているように思う。
例えば真言宗の寺の息子に生まれて、親や世間一般、あるいは宗門の大学から習う密教がつまらないと思って諦めてしまったとてももったいないという気がするのである。
多少のリスクを冒してでも自分なりの密教を尋ねるというのは価値のあることである。
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最近、ちょっと不思議な経験をした。
「図説 ヨーガ大全」を読んでいたら、密教の基本経典である「金剛頂経」の五相成身観という修行法について書かれていた。
この修行は5つのステップからなり、一番最初は「オーン 私は心の奥底まで見透かした」というう趣意のマントラを唱える。
ここで面白と思ったのは初見であるにも関わらず、自分がこのマントラをどこかで唱えていたという感覚が生じたことである。ものすごく懐かしいような、心に響く感覚だった。
あんまりこういうことを書くと、誤解されるむきもあるので控えるが、全然知らないはずの修行法を自分が良く知っているような気がしたというのは、少し面白い体験だった
一種のデジャヴュに近いものかもしれない。
宗教を通じて自分の心を探求するというのは面白いものである。
密教というのは他の宗教がそうであるように自分の心をどこまでも深く掘り下げていくことではないかと言う気がする。
私達の心の表面にはエゴや不快な記憶や不安や生理的欲求や社会的な規範に縛られた自分というものが渦巻いているが、そこを深く掘り下げていけば何かが見えてくる。
それがもし光輝く自分の姿であったらどんなに素晴らしいかと思うのだが。
そこに至る道はまだ遥かに遠い。
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