妖しい人間観察VS至高のマクラ
本日で11月も終わり。
当山も紅葉シーズンを終えてまた長い眠りにつくことになる。
最近、談志師匠を偲んでYoutubeで落語鑑賞をしている。
最初は談志師匠の動画を観ていたのだが、どんどん拡散しつつある。
幾つかおススメを御紹介したい。
柳家喬太郎「夜の慣用句」
この人の面白さは人間を観察する眼の鋭さではないかと思う。
特に、人間のダメダメな部分を描写するのがやたらに上手い。
漫画家でいうと「よんでますよ、アザゼルさん」の久保保久氏を思い出す。
- 作者: 久保保久
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久保氏もそうだが、下世話な話題が随分多い。道徳的とは到底言い難い。
「夜の慣用句」「午後の保健室」…嬌太郎氏の創作落語のタイトルを聞いただけで既に隠微である。
ここらへんは好きと嫌いがはっきり分かれるだろう。
だが露骨すぎる話になる手前で微妙にバランスをとっている。
単なる下ネタというよりは人間の不条理さや不思議さにもウェイトが置かれる。
そして、こんな人、居るよね…と言いながら自分の中にもこういう部分があると認めてしまう。
独特の才能を持った落語家である。
古典落語も相当の上手さ、面白さでマクラが秀逸である。
小三治師匠は若い頃は書生みたいな印象もあったが、今や堂々たる大師匠である。
とにかくマクラが素晴らしい。
特別なことを語る訳でもない。理屈を捏ねるでもない。
何気ない懐古談をとつとつと語るだけで起伏のある笑いが起き、聴いているといつの間にか引き入れられてしまう。
言葉に間や淀みが生まれると、会場の聴衆が耳を欹て、膝を乗り出すように聞き入ってしまうのが伝わってくる。
“聞く”ではなく“聴く”と表現するに相応しい。
落語家に対してマクラを褒めるというのはある意味失礼かもしれないが。
それでもこの噺家のマクラは抜群に面白い。
- 作者: 柳家小三治
- 出版社/メーカー: 講談社
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この「初天神」のマクラでは名人連のモノマネまでやっておられてかなりレアである。
最近は毒舌のようなアクの強いものが好まれるが、悪意の無い、とぼけたような味わいは誰にも不快な思いをさせない。
聴いているうちに小三治という噺家をどんどん好きになってしまうのである。
その噺はひと風呂浴びたような爽快さと後味の良さがある。
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