禅味 引退作
- 作者: 鈴木大拙,工藤澄子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1987/09/01
- メディア: 文庫
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禅寺での1日を過ごさせていただけたことはとても大きな刺激を受けた。
感心したのは座禅の前に御住職が実践されている前行である。
ヨーガ、太極拳、気功、呼吸法などを加味した大変に素晴らしいものでした。
特に股関節を柔軟にすることに重点を置いて工夫されていた。
座禅では股関節が柔軟ででないと長時間座ることが難しい。
この御住職は長時間座禅されるなかでそのことに気が付かれたそうである。
長時間座るための創意工夫があるというのは、この御住職が本気で座禅に取り組んでおられるということであり、御自身の豊富な体験の積み重ねがあればこそである。今後のご精進によってより高い境涯にいたられることを祈念しつつ禅寺を後にした。
禅寺での食事は応量器とよばれる鉢にご飯やお粥などをよそい、作法に準じていただく。
上手に焚かれた玄米を良くかんで味わっていると、身体が喜んでいるのが分かる。
面白いもので最初の何口か味わっていると忘れていたものを思い出すような感覚があった。
私達は食べるということに散漫になりがちである。
もちろん家族と話ながら食事をするということはとても楽しいことだし、団欒は大切である。
しかし、人と会話しながら、テレビを見ながらの食事では見失われるものもある。
私達は毎日のように食べ物を口にしながら何のために食事をするかを忘れ、素材の味も分からずに食べているのではないか…
、
味の濃いおかずを一口たべてご飯をモリモリ頂く…というのは美味しいが、そのことは食材が本来持っている味を分かりにくくしている。そしてご飯とおかずを一緒に食べるという習慣によっておそらく料理の味も濃いものになっている。
禅宗ではご飯もおかずも口のなかで混じらないようにご飯はご飯だけ、おかずはおかずだけで食べるようである。
こうして食べると素材の味が実によくわかる。
どの食材にも淡味、深味、甘味が備わっていることが分かる。
私達は調理のなかで塩味や糖分を加え素材の持ち味を殺してしまっているのではないか…と気がつく。
こうした食事をを毎日続けることは難しくても誰もが是非一度体験されると良いと思う。
最近は精進料理を食べることのできるお寺も多いが、食事作法まで指導してくれるところは少ない。それでもお粥か玄米ご飯を中心に一汁一菜でもこうした食事をすればきっと何かを感じるはずである。
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昨日は1日中雨天。
法務が2件があり、節分から続く一連の忙しさから一端開放された。法事の後で宮崎駿「風立ちぬ」を観た。
(以下「風立ちぬ」のネタバレが続きますのご容赦ください)
宮崎駿の引退昨であれば観ない訳にはいかない。
しかしテーマは戦争である。「蛍の墓」のような哀しい描写が続いたらどうしよう…と長い間観ていなかった。
私はどちらかといえば初期の「ナウシカ」「トトロ」「ラピュタ」でもう十分という宮崎ファンなので、全作品を観ているわけではない。
しかし…
観てよかったというのが第一の感想である…素晴らしいアニメである。
宮崎監督は《空を飛ぶものを描く》ことに莫大な情熱を注いでこられた方である。その集大成というべきか。
零戦の開発者ある堀越二郎の姿に宮崎駿自身の姿がダブってくる。
空想と現実。
文学とアニメ。
監督と登場人物。
これらが見事に融合しているのである。
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無いのである。
完成した零戦がエースパイロットの操縦によって華麗な空中戦を行うとか。
零戦の航空隊が敵の航空隊を撃滅するとか。
そんな戦争の華々しさが無いのである。
断言するのは自信は無いが、作中で零戦は一度も機銃を撃たない。ただ飛ぶのみである。
零戦を描いて、戦闘シーンがないのである。
恋愛も戦闘も活劇も笑いも可能なかぎり抑制されている。
これはどういいうことなのだろう。
ラストには活劇があって大団円がアニメの常道のはず…
多分…
この映画自体が零戦なのである。
背伸びして一等国の仲間入りをはたした日本のエンジンは非力であって、零戦の速力、航続力、上昇力を実現するために部品の重量を極限まで軽量化することがはかられた。
また枕頭鋲によってリベットでボコボコと隆起していた機体の表面が平滑にされ、車輪を機体内の引き込むなど空気抵抗をいかに減らすかについても大きな努力が払われた。
映画においてドラマ性という余分な負荷や抵抗となるものを可能なかぎり削減していった結果がこの映画なのだろう。
恋愛や活劇がないと映画ではないという既成概念への挑戦なのである。
あれっ?私達は実は映画の余分なものを映画だと思って観ていたのか?(笑)
作品の“軽量化”にはもうひとつ役割があって、恋愛や戦闘といったものがなくなった反面、この映画を観るものはこの映画が圧倒的に美しい色や形や光で構成されていることをしっかりと感じることができるのである。
空の色、雲の形、風雨、草原、古びた建物、使い込まれた家具、人間の表情、ありふれた光景の数々…
中でも往来の雑踏や忙しく立ち働く無数の人々など
集団として描かれる人間の美しさは特別なものがある。
描かれるどれもが美しく、そして描かれるもの全てが穏やかで、調和しつつも力強い生命感のある印象を受ける。
詩とは言葉そのものの美しさである。(と言ったのはヤコブソンだったと記憶しているが)
普段の言葉はそこの込められた意味や意図を相手に伝えるものだが、詩においては言葉そのものの美しさや韻律が
余談だが産経紙の1面の「朝の詩」はヒドい(笑)
あそこに載っているのは詩ではなく作者の思いいれやメッセージが大半なのである。朝から“詩もどき”を読まされる気分ときたら…それを堂々と詩にしてしまう産経紙の良識を疑う。
あのスペースを使って読売紙の「名言巡礼」のように古今東西の名詩を紹介してくれればどれほど良いかと思うのだが、そういう発想はないらしい。実に惜しい。
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ネットで「庵野秀明」と検索しようとすると、検索候補に「庵野秀明 声優」等よりも先に
『庵野秀明 棒読み』
というのが候補にでてきますけど(笑)
でも庵野監督の吹き替えはいいと思います。そこでまた監督と主人公がダブルのである。
精進料理で余分な味付けをなくしたら素材の味が分かる…
ドラマを無くしたらアニメの絵の美しさが分かった…
これは偉大な試みではないだろうか。
(多分、このことは小津安二郎や黒澤明の影響、というよりは両監督への対向的な意識が多分にあるにちがいない)
そしてファンならずとも誰もが、この偉大な監督にねぎらいと感謝の言葉を惜しまないだろう。
『ご苦労様』『ありがとう』と。
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