もうひとりの浦島太郎 石とバナナとお菓子の神様
昨年に続き雪の無い正月を迎え、本日も穏やかな日差し。
曇りがちながら時々澄んだ青空が見えた。
気温はそれほど低くなく、気持ちまで澄むような心地がした。
明日から北日本では荒天との予報。荒天の前に時折、こうした好日に恵まれることがある。
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丹後風土記では5世紀、雄略天皇の時代に「水の江の浦の嶼子」という人物が常世の国行って帰ってきたとされる。
この話がいわゆる「浦島太郎」の物語の原型である。
- 作者: 柿沼美浩,水端せり,中島ゆう子
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浦島太郎は<常世の国>に行ったとされるが常世の国に行った人物は他にもいる。
大国主神と出雲の国を形作ったスクナヒコ神が常世の国に渡っていったとも、
鵜草葺不合命(ウガヤフキアエズ)の息子で、神武天皇の兄にあたる御毛沼命(ミケヌマノミコト)が常世の国に渡ったともされる。
そして「水の江の浦の嶼子」のように常世の国に行って帰ってきた人物がもう1人いる。
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タジマモリという人物である。(『日本書紀』では「田道間守」、『古事記』では「多遅摩毛理」「多遅麻毛理」と表記される。)
古事記、日本食にはタジマモリは天皇の命令により常世の国にあるという<非時の香果>(トキジクノカクノミ)を求めて旅に出る。タジマモリは苦難の末に<非時の香果>を手に入れて日本に帰るが(往復10年とも)既に天皇は崩御されており、タジマモリは<非時の香果>を墓前に備えたあと慟哭し、自ら命を絶ってしまったという。(古事記、日本書記によって細部の異同がある)
タジマモリがもとめた<非時の香果>は橘であるというが果たして本当なのだろうか。
天皇が1人の忠臣に命じて得させようとした<非時の香果>が凡庸な品物であったはずがない。
決して珍菓、珍味の類を求めたのではないはずである。恐らくは人をして不老不死を得させるものだったのではないかと考えている。
だからこそようやく<非時の香果>を手に入れたにもかかわらず、天皇が既に崩御されていたことを悲しんでタジマモリは慟哭し、死んでしまうのだと思う。いかに素晴らしい<非時の香果>であっても天皇が崩御されていては意味がないからである。
古代史をひらく:独創の13の扉 (古田武彦・古代史コレクション 23)
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古田武彦「古代史をひらく 独創の13の扉」で<非時の香果>は熱帯のバナナの原種であるという説を紹介されている。
不思議なことにバナナ型神話というものが存在する。
神が人間に石とバナナとを提示さえ、人間は食べられるバナナを取ったばかりに人間は死ぬ運命を背負うという話である。人間が石を選んでいれば石のように不老不死が得られたという。
日本にも同様の説話がある。
天孫降臨した天孫ニニギに対し、国津神であるオオヤマツミが娘のイワナガヒメ(姉)とコノハナノサクヤビメ(妹)の姉妹を嫁がせる。しかしニニギは醜いイワナガヒメを帰してしまい、美しいコノハナノサクヤビメとのみ結婚してしまう。コノハナノサクヤビメは天孫の繁栄の象徴として、イワナガヒメは天孫の長寿の象徴として嫁いだものであったが、イワナガヒメが送り帰されたために天孫(天皇)は短命になったのであるという。
この説話では
<バナナ>→花
<石>→岩
という対比があるのはあきらかである。
わたしが面白いと思うのは天皇が不老不死を求めるのであるなら探すのは石であるはずなのではないか?
なぜ果実が不老不死と結びつくのかということである。
しかも古田氏の紹介されている説では<非時の香果>とはバナナ(不老不死の対極)であるという。
その点が少し腑に落ちないところである。
もっとも不老不死の果物という例が存在しないわけではない。
不老不死の果物というと私に思い起こされるのは“桃”である。
(あるいはイザナギノミコトが黄泉の国から逃げ帰るときに追いすがる黄泉醜女に投げつける桃も生命力の象徴であろう。)
故郷に帰った浦島太郎が悲嘆にくれたように、タジマモリも嘆き悲しみ、そして死んでしまう。
常世の国というのは素晴らしい世界であるはずなのに、そこを訪れた者が悲劇にみまわれるというのはどういうことなのであろうか。
人は不老不死など求めるべきではないと暗に諭しているのだろうか・
もし神さまに「石かバナナか」ととわれたらとりあえず「両方ください」と言ってみてはどうだろうか。
タジマモリは<非時の香果>にちなんでお菓子の神様として崇敬されているという。
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とか
「西王母 桃はJAタウン」
みたいな広告が表示された。
いくらんでもアマゾンやJAで西王母の桃は売っているわけ無い…
と思ったのだが
アマゾンのほうは「西王母桃」とかいう女の子のキャラクター商品…
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JAのほうはちゃんと「西王母」という桃の品種があるのだという。
昔の人は地の果て、海の果てに仙人の世界を求めたが、ネットの情報の世界も際限のない世界になりつつある。その果てに何があるのだろうか…
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