御室のみほとけ ハマる人々 打ちのめされる本
兼務寺院の本山である仁和寺からパンフレットが届いた。
先日、文化庁の方から伺った上野国立博物館での仁和寺と御室派寺院による特別展の案内である。
タイトルは『仁和寺と御室派のみほとけ』。
などを筆頭に福井中山寺の馬頭観音菩薩坐像(秘仏・重文)や福井明通寺の降三世明王立像も出展されるとのこと。
関東でなければ足を運びたいところである。会期は来年1月16日から3月11日まで。
江戸時代というのは面白い時代で仏教の衰退と同時に神仏の信仰が大衆に普及した時代であった。
私の感じでは物見遊山やグルメを伴ったお参りや開帳など“エンタメ”的信仰が隆盛したように思う。
以前、法隆寺の関係者の方に伺ったところでは江戸時代に法隆寺の出開帳があって莫大な財施が集まりその財力で伽藍の整備を行ったことにより今日まで寺勢が保たれたとのことである。
夕方には逮夜のお参り。
お勤めを終えて施主さんのお宅を出ると日が暮れていた。
車を止めたところまで歩いていると秋の虫の声が空気に満ちていた。
田んぼの横を通ると濃い稲穂の香りがした。
人気の無い静かな時間の中で自然に触れていると懐かしいような、深々とした気持ちが湧いてきた。
産経紙でオンラインゲームなどのバーチャルな世界にはまって破綻した人々の特集を読んだ。
偶然かもしれないが、そうした“ハマる人々”は幼児に親からの暴力など親子関係に大きな齟齬の経験を抱えているという共通点があった。
幼児〜思春期に親子関係に齟齬をきたした経験をした人は大変多いように感じるが、そのことが直接間接にネットへの依存の大きな引き金になっている可能性は否めない。
関係性というものが対人や対社会的なものであった時代は終わりつつあり、そこに対バーチャルなものが急速に大きくなりつつある。
スマホ、パソコンをはじめ人口の過半が少なからずバーチャルな世界に魅入られている時代には人間同士のコミュニケーションや自身の肉体的・生理的感覚の回復、自然や社会性を体験するプログラムが是非とも必要であると思う。
- 作者: 米原万里
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/05/08
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お盆が終わりささやかな読書の時間へ。
注文した古書が次々に届く。
米原万理「打ちのめされるようなすごい本」。
ロシア語会議通訳にして作家・エッセイストとして活躍し若くして逝去した著者の書評集。
当然、ロシア関係の著書が多い。私はあまりロシア関係に関心のないこともあってそんなに“打ちのめされるような”書評は少ない。
但し、著者のガンとの闘病の体験記といえる『癌治療本を我が身を以って検証』というくだりは文字通り打ちのめされる内容。
著者は癌治療に関する情報を集め、華々しい効果を謳っている治療者を訪ね、その治療法を片っ端から体験する。
その治療法の高額なこと、治療者の傲慢なこと、前評判の内容と実体の差に著者は落胆したり、憤ったりしながら“検証”を繰り返す。
癌という宣告を受けると少なからぬ人々はこうした代替医療に救いを求めるがその前に本書の『癌治療本を我が身を以って検証』を読むべきである。
不透明で効果の定かでない治療に何十万もの大金を投じるくらいなら文庫本1冊は安いものである。
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