追悼のレシピ   丸元淑生氏のスープ

   
【お坊様のレストラン】

 


 本年3月6日、丸元淑生氏が亡くなった。
 死因は食道ガン、74歳にて永眠された。

 作家として芥川賞の候補にもなられたが、80年台から栄養学を中心とした調理や最新の栄養学に関する啓蒙書、料理集などを相次いで出版された。

 ちょうどバブル経済全盛期でそれと平行して美食や飽食が絶頂期にあった時代にこうした活動は特異であり、孤高の感があった。


 <素材の栄養素を壊さずに調理した料理が一番美味なのではないか?>という丸元氏の提案は今でも傾聴に値するのではないかと思う。
 
 膨大な量の食材や高価な調理器具を購入して、栄養学や各国の伝統的レシピに基づいて調理し、内外で発表された最新の栄養学の論文をフォローし続け、試行錯誤を重ねた活動は壮大な実験のように思える。
 正直言って「びっくりするほど美味しい」と書かれてあっても、そうは感じられないレシピも沢山あったが、個々のレシピの成否より、その方向性を大切にしたい。

 できればもう少し視野を広げて東洋医学的な養生の考え方を取り入れたり、食べることそのものへの考察…<食事ができることに感謝する><食べることと食べないことが陰陽の関係にある>などにも言及して頂ければよかったのではないかとも思う 。

 
 昨日はお寺の畑で取れた南瓜が届いたので、南瓜のスープを作った。

 皮を向いて、小口に切ったものをビタクラフトの鍋にごく少量の水を入れて加熱する。
 火が通ったら、少量の水と一緒にフードプロセッサーに入れてペーストにする。それを牛乳で伸ばして加熱する。(丸元氏のレシピでは味付けは塩コショウのみだが、私はほんの少量バターを加える。)

 これは確か最初に読んだ「丸元淑生のシステム料理学」に載っていたレシピである。フランスのロワール地方の農民の料理とのことである。

 南瓜の優しい味が身体に染透るようである。シンプルだが滋味に溢れたスープだった。


         煩悩は たえず  南瓜を両断す          赤松柳史
                                               合掌