風薫る頃

        【お知らせ】

  昨日、HPを少々更新致しました。
  ご笑覧下さいませ

          http://ujimaccya69.hp.infoseek.co.jp/


 午前中は小雨が降った。

 午後から京都市内のSKY大学という団体が拝観と研修にこられるので天候を心配していたが、幸い午後になって雨が上がった。

 この団体が来てくださるのは今年で3年目である。
 京都府の外郭団体で、分かりやすく言うなら老人大学である。

 毎回1時間半から2時間近くを割いて、拝観や境内の散策をされる。
 こちらとしては常々お寺をゆっくり体感していただきたいと思っているので、ある意味理想的な拝観の仕方である。


 最初に宝物殿を案内した。ご挨拶の後

 「本日は京都の大学生の方が来られると伺ったのですが…皆さん結構老(ふ)けておられますね」

 と言ったら結構ウケました。人生の大先輩に対して失礼な!と怒る方はいない。人間の出来た方ばかりである。


 最初に「般若心経」でお勤めをするのだが、今回は蝋燭の灯りを点(とも)して、蛍光灯を消してお勤めをすることにした。

 往時のお勤めの様子を再現して体験して頂こうと思ったのだ。

 蛍光灯の明りを消すと、宝物殿の中は文字も読めないほど暗くなる。そして仏像に僅かに残る金箔が蝋燭の灯りに照らされて深みのある淡い輝きを放ち始める。

 思いつきでそんなことをやってみたのだが、なかなか得がたい体験だった。



 宝物殿の仏像を説明した後は境内をご案内した。

 雨の後なので、濡れた木々の梢を通って吹く風に潤いを感じる。
 まだ新緑の若々しい気配が残っていて境内を吹く風が何とも心地良い。

 今日、拝観に来られたのは市内の喧騒の中で暮らしておられる方ばかりなので、静かな山寺の風情に何らかの感慨を持たれたようだった。この山寺から何かを感じて帰って頂けたら有難いといつも思う。

 
 SKY大学の方が帰られた後、しばらく境内に一人で居た。
 自然の中に佇んでいると空海のお書きになった有名な詩※を思い出した。

 日常の煩わしさを全て忘れて、自然の中に溶けてしまいたいと思うことがある。
 その感覚は単なる現実からの逃避なのか、人間として当たり前のものなのか、私にはまだ分からない。



    「後夜に仏法僧の鳥を聞く」空海:「性霊集巻10」

  閑林に独坐す 草堂の暁

  三宝の声 一鳥に聞く

  一鳥声有り 人心あり

  声心雲水ともに了了


   ごやにぶっぽうそうのとりをきく
  
  かんりんにどくざす そうどうのあかつき
  さんぽうのこえ いっちょうにきく
  いっちょうこえあり ひとこころあり
  せいしんうんすい ともにりょうりょう