瞳孔が開いた日 中村元「般若経典」 美しい誤訳
丈夫が取り得でめったなことでは病院にもいかなし、薬も飲まない。
最近、眼の前がチラチラすることがあって、加齢による飛蚊症だと分かってはいるのだが、少し気になって病院にいくことにした。
隣町の総合病院に行こうとして、途中で保険証を忘れたことに気がついた。
めったなことでは病院に行かないので、たまに病院に行くと必ず保険証や診察券を忘れる。
取りに帰ったら妻に
「あら早かったのね」と言われる。
…これからなのですよ
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待ち時間が長いと聞いていたので中村元「般若経典」と五井昌久「老子講義」を持参。
待合所に60インチくらいある液晶テレビが置いてあって、
出血した眼球の写真とか…
白濁した眼球の写真とか…
が次々と映し出される。
かなり怖いのである…
瞳孔の開く薬を点眼して、瞳孔が開いたところで強烈な光をあてて、眼球を調べてもらう。
瞳孔の開いたところに強い光を当てるのだから拷問に近い。
ようやく異常なしのお墨付きを頂くがなんだかんだで3時間あまりかかった。
瞳孔の開く薬というのが曲者で、「車は運転できません」と言われ、話半分と思って強引に車を運転しようと駐車場に出たらまぶしくで眼が開けられない。瞳孔が開いていることが実感できた。
仕方がないので病院の食堂で昼食を摂り、売店でアイスを買って食べていたら呼び止められた。
「診察料をお払いください」
診察を終えて会計書類を受け取るのをい忘れていたらしい。
敷地の広大な総合病院なのでその事務員の方が広い病院内をどうやって私を探し出されたのか今も持って謎である。
やはり病院は苦手である。
結局3時間あまり病院に居て、持参した中村元「般若経典」は半分くらい読み終えた。
実に素晴らしい本である。
お経と呼ばれるものは一体いくらくらいあるのだろうか。
一説にはお経の数は3000を越えるともいわれる。
「大般若経」だけで600巻もある。敵に追われた戦国武将がお経の箱に隠れて助かったという話があるが、これは多分「大般若経」のことであろう。それくらいお経というのは分量が多いのである。
膨大な経典のうち大事なお経だけでもきちんと読んでおきたいという思いが生まれるのは当然である。
中村先生のこのシリーズは全7巻で大乗仏教の主要な経典について全訳もしくは抄訳、解説、現代語訳、注解で構成されている。
ラジオでの講演や対談がベースになっているので大変に分かりやすく、正確、で学問的にも深みのある内容である。
「般若経典」でも取り上げられているのは「般若心経」「金剛般若経」「八千頌般若経」の3つ。
(「八千頌般若経」は全訳ではなく抄訳である。)
最初の2章を割いて、大乗仏教の勃興にいたる歴史的な背景と般若経典における空観が説明されている。この2章もとても分かりやすく書かれている。
「般若心経」は常用されるお経だが他の「金剛般若経」や「八千頌般若経」と比較することでいろいろな発見もある。
「般若経」の話が主であるがいろんな余談が載っていて面白い。
念珠は仏教起源のものがキリスト経に取り入れられてロザリオになったと思っていたのだが、本書によれば起源はバラモン教にあるという。
念珠は108玉が正規の数だが、108という数を尊んだのもバラモン教であるという。
念珠はイスラム教徒にも取り入れられた。西洋で念珠(ロザリオ)を用いるのはギリシャ正教までで、プロテスタントでは用いないとのことである。
インドでは念珠のことを「ジャマ・パーラー」(念誦の輪)と呼ぶ。
これが翻訳されるときに音の類似から「バラの輪」と訳された。
したがって「ロザリオ」(ポルトガル語)の「ロザ」は“ローズ”(バラ)のことであるらしい。
「バラの輪」とはなんとも美しい誤訳ではないか。
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