秋きぬと 夜の女王が生命を生んだ
数日前から秋の気配のようなものを感じていたが、本日ははっきりと「秋がやってきた」と実感した日であった。気温は相変わらず高いが、空気がどこか涼しげである。
夜になると虫の声が頻りに聞こえる。窓を開けると山から下りてくる風も一層冷たくなっていて、その風に浸りながら虫の声を聞くと毎年のようになにか哀しいような、寂しいような気持ちになる。
お盆の棚経も施餓鬼もお寺とっては繁忙期になるのだが、それらが終らないうちに秋がひたひたと近づいているのは毎年のように不思議な感じがする。
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この時期になるといつも「古今和歌集」の和歌を思いだす。
秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる
古語の「おどろく」とは現代語の驚愕ではなく、気づきを意味する。
作者がどんな「風の声」を聞き、秋に気づいたのかは興味あるとことである。
それにしても<風→秋>という連想は少し理解しづらい気がする。
秋=風?
掘り下げたらもう少し別のものが見えるかもしれない。
例えば「おどろく」は表記上は濁音無しで「おとろく」となったはずであり、『おとろく』の「おと」は『風の音』の「おと」と響きあっていたのかもしれない。
…いつもの妄想だが、お盆を過ぎて時間ができたらゆっくり考えてみたいものである。
午前中は棚経だったが秋の冷気のおかげか少し身体が楽だった。
それでも暑さと疲労で時々、意識が途切れそうになる。
今日はなぜかお大師様の肖像が頻りに脳裏に浮かんだ。なんとなく有り難い感じがして嬉しかった。
虚空尽き 衆生尽き 涅槃尽きなば 我が願いも尽きん
この言葉の解釈は難しいが私には我々衆生を救いたいというお大師様の切なる願いがこめられているように感じる。
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月といえば最近読んだ『宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議』の第1章が面白かった。
第1章のタイトルは
『人間は月とナトリウムの奇跡で誕生した』
一見意味不明のタイトルだが…内容はなかなか面白い。
人体にとってナトリウムは際立って重要な役割をはたしている。
血液もリンパ液もナトリウムイオンの濃度が常に一定にたもたれており、とりわけ神経細胞と筋肉細胞はナトリウムの低下によって機能を喪失してしまう。
38億年前に誕生した生命は15億年間(!)は単細胞生物として海を漂っていた。単細胞生物としての生命は海というナトリウムが豊富な環境を利用していたが、多細胞生物へと進化し脊椎動物となって陸上に進出してもナトリウムに依存した機能は変化しなかった。
つまり原始の海にナトリウムなどのミネラルが豊富だったことが生命の始まりと方向性を大きく決定づけたのである。
ではなぜ原始の海にミネラルが豊富だったかといえば月が地球からみて現在の12分の1くらいの近い距離に存在していたことが大きいとされる。
その結果、月は現在の100倍以上のエネルギーで潮の干満を引き起こし地殻が潮の流れで削られることで地殻の中のミネラルが海に溶け出したと考えられる。原始の海というのは嵐の吹き荒れる凄まじい世界だったというのである。その荒々しい環境こそが生命を生んだというのである。
やがて月は徐々に地球を遠ざかり海の潮汐が現在を同じになって多細胞生物が生まれ生命の進化が加速化したという。
月の引力による潮汐が嵐吹き荒れる海を作り、その海が生命を生んだ…なんともスケールの大きな話であった。
- 作者: ロバート・A.ハインライン,牧眞司,Robert A. Heinlein,矢野徹
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