玉か石か


 最近、与党の旗色が宜しくない。
 アキバ族の人気に後押しされた麻生首相も青息吐息である。

 漫画の好きな首相のイチ押しは「ゴルゴ13」だそうである。
 自宅に全巻を揃え、執務室にポスターまで貼っているそうである。

 麻生首相モントリオールオリンピックに射撃の選手として出場したこともあるのでゴルゴ13に親近感のようなものを抱いているのかもしれない。尤もゴルゴは至って無口なのに麻生氏は余計なことを喋りすぎるきらいがあるが…

 首相が国際テロリストを主人公にした漫画を愛読するとはけしからん!と目くじらを立てる野暮なマスコミは居ないようだが、以前読んだ「ゴルゴ13」にこんなエピソードがあった。

 ゴルゴは中東の研究施設に居る科学者の暗殺を請け負う。
 相手は頑丈な天蓋に覆われた地下ドームの中に居て、通常なら狙撃は不可能である。ゴルゴはイスラム教徒の科学者達が日に5回行う礼拝(サラート)のために天蓋を開けた瞬間、見事に狙撃に成功するというのがストーリーである。

 日本人にとっては科学者が一日5回礼拝するというのがとても奇異に思えるかもしれない。
 科学と信仰は両立しないというのが日本人の感覚だからだ。


 暫く前に「オーラの泉」を見た。
 ちょっと驚いたのは江原啓之氏がゲストの<前世>について語る前に「これはおとぎ話だと思って聞いてくださいね」と前置きしてから<前世>について語っていたことである。

 この番組の最後には<前世も守護霊も科学的に証明されたものではなく、より良く生きるためのヒントです>というような断りがなされる。

 日本では宗教について語るためには随分と肩身が狭い思いをしなければならないのである。
 日本のマスコミの中では仏教などの伝統宗教を除けば、宗教的な信念を堂々と語るのは難しい。

 そしてこうした配慮をしなければならない最大の理由は、<前世>や<守護霊>をネタに怪しげな商売をしている人達が大勢いるというからだと聞いたことがある。そういった人達は江原氏や三輪氏の兄弟子や師匠だなどと平気で名乗っているそうであるから要注意である。

 山寺にも時々、そうした相談の電話が掛かってくる。
 先日は霊障に苦しんでいるという方から電話があり、しばらくお話をした。
 この方、これまでとにかくいろんなお寺に電話を掛けておられるそうである。○暦寺に電話したら「拝み屋さんのところに行って下さい」と丁重に断られたそうである(笑)

 こうした相談を持ちこんでこられる方に良く聞くと、極めて無責任に「あなたには○○の霊が憑いている」というようなことを言う人に引っ掛かったというのが真相のようである。

 どんな職業にも玉石混交であるが、宗教に関する限り石を玉と思ってしまうと取り返しのつかないことがある。

 尤も、今日の日本の政治の中には日本の将来を託せるような玉と呼べる人材が殆んど見あたらない気がする。それを考えると少し寒々とした気持になる。