心温かきは万能なり

    
       【お知らせ】

    昨日、HPを少々更新致しました。

    ご笑覧下さいませ

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 午前中は穏やかな曇天だったが、午後2時過ぎに突然の激しい雨と雷。
 大きな雷が何度も落ち、庫裏が振動で震えた。春雷である。夜も少し雨が降り、雷が鳴った。時々みぞれが降ったが、それでも芯まで冷える寒さではない。夜の雨でさえどこか暖かいのである。

 桜井章一氏は20年間麻雀で無敗の伝説を築いた鬼才である。

 「心温かきは万能なり」というのは桜井章一氏の著書の表題だが、人間の心の温かさ、優しさを考えようとすると時々この言葉を思いだすことがある。20年間無敗という伝説の勝負師の言葉心の温かさはどれほどのものだろうか…


 最近、住職が晩酌しながら昔のことを語ることが多くなった。

 「ひょっとして死期が近いのでは…」という考えが頭をよぎる(笑)
 住職はお世辞にも学があるというタイプではないのだが、とても記憶力が良い。

 戦争末期にお寺の庫裏で檀家さん達が酒を飲んでいる時に一人が「日本は戦争に負ける」と言ったら、同席していた巡査が激怒してサーベルを抜き、「官憲に突き出してやる」と叫んで皆騒然となった…とか何だかセピア色のドラマを見ているような話もある。

 田舎に住んでいると人間関係の濃密さや複雑さに時々息苦しくなることがある。
 だが住職の口から語られる昔の田舎の人間は優しい人が多かったように感じる。

 住職が生まれたのはT寺という山寺で、回りに農家が20軒ほどあった。

 雪が積もると大人が橇(そり)を引いて山道を降り、子供達の為に道を作ってくれたとか、学校の帰りに山寺に続く山道を登ろうとするといつもやかんが置いてあって、それは山道を登って帰る子供達の為に農家の方がお茶を用意してくれていたのだ…

 そんな話を聞いているとおおらかで、心の優しい田舎の人たちの顔が眼に浮かぶようである。お金は無くても、手間を惜しまず、労を厭わない生き方をした人達が大勢いたのだと感じる。

 住職とは詰まらないことでよく喧嘩もするがその心の内にとても温かいものを感じる。それは、多分、住職自身が他人に優しくされた積み重ねがその心に反映しているのではないかと思う。

 自分の心というのは他と切り離されて存在しているのではなく、自分の周りの人間の想いや振る舞いと繋がり、映りあい、溶け合って存在しているのかもしれない。


 世に知られない田舎の農家の人達の心にも、伝説の勝負師の心にも、その底に温かいものがある…そう考えると私の心にも何か温かいものが流れるのが感じられる。